最新記事
絶滅種の復活

絶滅した氷河時代の巨大動物「マンモス」が2028年に地上に復活する【ゲノム編集最前線】

Bringing Back the Mammoth

2024年4月5日(金)18時55分
ベン・ラム(コロッサル・バイオサイエンシーズCEO・共同創業者)、エリオナ・ハイソリ(同社生物科学部門責任者)

newsweekjp_20240405035215.jpg

コロッサルの共同創業者のベン・ラム(左)とジョージ・チャーチ。チャーチはハーバード大学の遺伝学者だ COLOSSAL BIOSCIENCES

マンモスのゲノム解析は非常に興味深い研究だ。マンモスについては基本的な生物学的事実がほとんど分かっていない。そこで実際のゲノムからひもといていくわけだ。

コロッサルではアジアゾウとアフリカゾウのゲノムの世界最大級のデータベースを構築中だ。ゾウの祖先である長鼻目の全ゲノムについてもデータベースに加えている。調べるほどに新たな事実が分かってきて、実に刺激的だ。

人工子宮の開発も進行中

研究の倫理面について言えば、科学的な問題や種の保全について検討する諮問委員会を立ち上げた。生命倫理学者のアルタ・チャロら、この分野のトップクラスの人材を会社に迎えてもいる。

ゾウの種の保全のために集められた資金がマンモス復活計画に流用されているとの批判を受けることもあるが、それは見当違いだ。

わが社はレオナルド・ディカプリオが立ち上げた環境保護団体「リ:ワイルド」と協力関係にあるが、それもわが社が保全活動に新たな資金と技術をもたらしているからだ。

ゾウの保護のために集めた寄付金を分けてくれと環境保護団体に頼んだりはしていない。コロッサルの場合、研究資金の調達にはテクノロジー系の投資家を頼っている。

それに私たちは、野生動物の種の保全に応用できる新技術は全て、無料で提供している。

つまり当社は、ケニアやボツワナなどに生息し、生息数の少ないキタシロサイやモモイロバト、ゾウの保護プロジェクトのために活動するとともに、種の保全のためのツールを開発しているのだ。

マンモス復活に力を注ぐ一方で、やはり絶滅種であるドードーとタスマニアタイガー(フクロオオカミ)の復活プロジェクトも進めている。復活させた個体を自然に戻すための計画の立案も始めた。これは時間のかかる作業だ。

タスマニアタイガーに関しては、先住民のリーダーや自治体幹部、地元住民と共にワーキンググループを立ち上げた。

3カ月ごとの会議でプロジェクトの進捗状況に関する情報提供をするところから始めて、環境への影響についても検討していく。慎重にプロセスを踏んでいるのだ。

技術的な面で言うと、マンモスの妊娠期間の長さから考えて、複数の群れが作れるくらいまで数を増やすには、さらなる技術革新が必要だ。

その中でも私たちが取り組んでいるのが、人工子宮の研究だ。SFみたいに思われるかもしれないが、コロッサルの17人からなる専任チームは、開発に向けて技術的に大きく前進しつつある。

実用化すれば、マンモスを人工子宮の中で育て、絶滅種の復活を現実のものにできるだろう。

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ナジブ・マレーシア元首相、1MDB汚職事件で全25

ワールド

ゼレンスキー氏、トランプ氏と28日会談 領土など和

ワールド

ロシア高官、和平案巡り米側と接触 協議継続へ=大統

ワールド

前大統領に懲役10年求刑、非常戒厳後の捜査妨害など
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    赤ちゃんの「足の動き」に違和感を覚えた母親、動画…
  • 8
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中