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シリア、通貨急落でデノミへ 前政権崩壊から1年の節目に新紙幣発行=関係者

2025年08月22日(金)18時52分

8月22日、シリアが、通貨の呼称単位を2桁減らすデノミを実施する。写真はシリア・ポンド紙幣。アザースで2020年2月撮影(2025年 ロイター/Khalil Ashawi)

[ダマスカス 22日 ロイター] - シリアが、通貨の呼称単位を2桁減らすデノミを実施する。内戦で大きく価値が下がった通貨の信頼回復が狙い。昨年12月に崩壊したアサド前政権時代との決別という象徴的意味合いもあるという。

シリア・ポンドは2011年の内戦勃発前は1ドル=50ポンドだったのが、現在は1万ポンド前後となっている。

通貨価値の大幅下落により、日々の資金決済や送金に支障が出ている。一般市民の日常的な食料品の買い物も、現在の最高額紙幣5000ポンド札が少なくとも500グラムが入ったビニール袋を使う。

また40兆ポンドが公式な金融システム以外で流通していると推計されている。新札への切り替えによって、暫定政権が資金の流れを監督・管理するという狙いもある。

ロイターが閲覧した文書によると、シリアの中央銀行は8月中旬、民間銀行に「ゼロを減らした」新紙幣を発行する意向を伝えた。

関係者によると、新紙幣発行のためにロシア国営の貨幣印刷会社Goznakと契約した。契約は7月下旬にシリア暫定政府の代表団がモスクワを訪問した際にまとまったという。

新紙幣への切り替え開始は、前政権崩壊から1年となる12月8日から。銀行関係者によると、2026年12月8日までの1年間は移行期間として、新札と旧札両方が流通するという。

中銀の金融機関への通達は、新札取り扱いのシステム試験や紙幣貯蔵などのインフラの確認を指示している。

新紙幣発行は、独裁政権から脱却したシリア再生を国民に印象付けることになる。現在2000ポンド紙幣にはアサド前大統領、1000ポンド紙幣には前大統領の父ハフェズ・アサド氏の肖像画が印刷されている。

シリアの経済学者で国連のコンサルタントでもあるカラム・シャー氏は、紙幣の切り替えは必要な政治的転換であるものの、高齢者を中心に混乱をもたらす恐れがあると述べた。暫定政権が国内を完全に統治しているわけでなく、新紙幣が全土に流通するための計画や法的枠組みも欠如していると指摘した。

ロイター
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