最新記事

ゲノム解読

既知の真核生物184万種、すべてのゲノムを解読する国際プロジェクトが進行中

2022年1月20日(木)16時30分
松岡由希子

バイオのムーンショット型研究ともいわれる地球バイオゲノムプロジェクト  earthbiogenome.org

<既知の真核生物約184万種すべてのゲノムDNAの配列情報を10年かけてカタログ化する国際プロジェクトが進行中だ>

「地球バイオゲノムプロジェクト(EBP)」は、動物、植物、菌類、原生生物など、既知の真核生物約184万種すべてのゲノムDNAの配列情報を10年かけてカタログ化する国際プロジェクトだ。

2016年に初めて提案され、2018年11月、英ロンドンで正式に創設された。米カリフォルニア大学デービス校、英イースト・アングリア大学、豪ラ・トローブ大学、日本の国立遺伝学研究所、かずさDNA研究所ら、22カ国44の研究機関が提携し、ゲノム解析に関する49のプロジェクトがすすめられている。

真核生物約184万種すべてのゲノム配列情報を10年かけて解読

「地球バイオゲノムプロジェクト」は3つのフェーズで構成されている。まず、フェーズ1となる最初の3年間で、真核生物の分類学上の各科の代表種約9400種のゲノム配列を解読。4年目から7年目までのフェーズ2で各属の代表種約18万種のゲノム配列を解読した後、最後の3年にあたるフェーズ3では残りの約165万種のゲノム配列を解読する計画だ。

「地球バイオゲノムプロジェクト」は、2022年1月25日付の「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」で2018年11月から2021年2月までの研究成果を発表した。

これによると、2021年3月4日時点で既知の真核生物の0.43%にあたる6480種のゲノムのDNA配列情報が公開された。フェーズ1の目標を達成するためには1日あたり真核生物9種のゲノム配列の解読が必要だ。現在の技術と研究資金によれば年間約3000種のゲノム配列を解読できると期待され、2021年12月末までにはフェーズ1の対象のうち34%にあたる約3200の科についてゲノム配列の解読が完了したと見込まれる。

生態系全体での種分化、適応などのプロセスの解明に役立つ

「地球バイオゲノムプロジェクト」は、その研究の目的や意義についても明らかにしている。同じく2022年1月25日付の「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」で発表された研究論文では「自然生態系のすべての種の分岐を示す全ゲノム配列情報が利用できるようになってはじめて、進化学的・生態学的に重要な問題に取り組める」としている。また、既知の真核生物すべてのゲノムDNAの配列情報のカタログ化は「生態系全体での種分化、適応などのプロセスの解明に役立つ」と説いている。このような解明がすすむことによって、系統学、生態学、環境保全、農業、医療、バイオ産業など、幅広い分野の研究にも役立つと期待されている。

Harris Lewin: Creating A Digital Repository of Life

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ政権、カリフォルニア州提訴 選挙区割り変更

ワールド

米政府、独などの4団体を国際テロ組織指定 「暴力的

ビジネス

米経済にひずみの兆し、政府閉鎖の影響で見通し不透明

ワールド

トランプ氏がウォール街トップと夕食会、生活費高騰や
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 5
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 6
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 10
    「ゴミみたいな感触...」タイタニック博物館で「ある…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中