最新記事
韓国

韓国全土で医療の混乱、政府の医師不足解消策に反発して研修医は大規模ストを強行した

2024年3月12日(火)17時00分
佐々木和義

公共病院や中規模病院に患者が殺到しており、診療を受けられる病院を自力で見つけることができない軽症患者が救急車を呼ぶケースが増えるなど、出動回数が通常の倍以上になった消防署もあり、急車の遅延が続いている。

事態を重く見た保健福祉部は23日、保健医療災難(災害)危機警報の警戒レベルを最も高い「深刻」に引き上げた。27日には看護師が、法令の範囲内で研修医が担ってきた医療行為を行う計画案を発表した。

 
 

政府対医師団体、法廷での対立激化

これまで医師会は政府との対立で無敗だった。2000年には医薬分業を進める政府の方針に反発して大規模ストライキを実施し、2014年には遠隔医療の推進に反発した。2020年7月にも保健福祉部が打ち出した大学医学部の定員増に反発してストライキを辞さない強硬な態度を見せたことから文在寅前政権が撤回したが、尹錫悦政権に撤回の考えはない。

2月27日、保健福祉部は医師らのストライキが法令で禁止している診療拒否に該当するとして医師協会関係者5人を医療法違反と業務妨害、教唆・ほう助などの疑いで告発した。また、現場を離脱した研修医には業務開始命令を発令。2月29日までに復帰しない場合、医療法違反に基づく免許停止や起訴などの法的措置を取る考えを示した。その一方で、職場復帰すれば不問に付すと付け加えている。

世論支持増で政府方針に追い風

世論は政府に味方する。保健医療労組が行なった世論調査で回答者の89.3%が定員増に賛成しており、世論調査会社が医学部定員増の発表後に行なったアンケートでも与党「国民の力」支持者の81%、最大野党「共に民主党」支持者の73%が賛成するなど、回答者の76%が肯定的で、29%に落ち込んでいた政権支持率は政府と医師協の対決の激化に併せて39%まで回復、60%前後で推移していた不支持率も53%に下がった。国会議員選挙の投票日まで6週を切ったいま、尹錫悦政権が方針を変える可能性はない。

医療水準の低下を危惧する声や少子化と人口減が続くなか医師の増加を懸念する研修医の気持ちは理解できるという声もあるが、患者を人質に取る行為は許されないし、そもそも患者が犠牲になることを厭わない研修医は医師になるべきではない。

ニューズウィーク日本版 総力特集:ベネズエラ攻撃
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年1月20号(1月14日発売)は「総力特集:ベネズエラ攻撃」特集。深夜の精密攻撃で反撃を無力化しマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ大統領の本当の狙いは?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

加首相、中国との関係改善と習主席の指導力を称賛

ビジネス

「ドクターペッパー」、JDEピーツへTOB開始 1

ビジネス

リシュモンの10─12月売上高、予想上回る 中国の

ビジネス

中国の25年新規融資、7年ぶり低水準 12月は予想
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広がる波紋、その「衝撃の価格」とは?
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    イランの体制転換は秒読み? イラン国民が「打倒ハ…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 7
    鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない…
  • 8
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 9
    年始早々軍事介入を行ったトランプ...強硬な外交で支…
  • 10
    飛行機内で「マナー最悪」の乗客を撮影...SNS投稿が…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 5
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 6
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 7
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 8
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中