最新記事
BOOKS

「歴代首相に盆暮れに1000万円ずつ献金」「地域振興で潤うのは一世代だけ」原発にまつわる話

2024年3月28日(木)12時45分
印南敦史(作家、書評家)

個人献金、広告料、パーティー券購入

あくまでこれは一例に過ぎないのだろうが(というところが恐ろしい)、電力業界は個人献金や広告料を含め、さまざまな手段で政治家に金を渡してきたという。2011年7月には電力会社9社の役員の92.2%が自民党の政治資金団体「国民政治協会」本部に個人献金していた実態が判明し、会社ぐるみの「組織献金」であると指摘された(同年7月23日「共同通信」より)。

電気事業連合会(電事連)という大手電力会社で作る民間団体も、記録のある1983年度からの11年間で、65億5000万円を自民党機関紙の広告費として同党に支払っていた(1993年10月14日付「朝日新聞」より)。


 さらに、「闇で数千万円飛び交っていたという時代から、今は政治資金パーティー券で集める時代になっているのでは」と指摘する声もある。1枚数万円のチケットを何百枚単位で売って資金を集めるパーティーは、大部分が献金となる。法律上、政治資金パーティー券を購入した者のうち、氏名・名称を政治資金収支報告書に記載しなければならないのは、1つの政治資金パーティーにつき20万円を超えた購入者だけだ。20万円以下の購入者については、総務省が手引きで「必要に応じ報告してもさしつかえありません」としており、明かすことは義務化されていない。(108ページより)

今まさに自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件が問題化されているだけに、この点もまた気になるところではある。

ちなみに電力業界によるパーティー券購入について言えば、電事連が仕切っていたようだ。電事連の元役員によれば、「政治家側から電事連にパーティー券購入の依頼があると、電力業界への貢献度や政界での影響力によって、購入する枚数を決めていた」というのである(2013年3月31日付「朝日新聞」報道からの引用)。電事連が団体として購入するほか、選挙区を考慮して各電力会社に購入額を割り振ったという。


 現役の議員では甘利明氏、稲田朋美氏、麻生太郎氏などが原発推進派で知られるが、彼らが電力業界にパーティー券を買ってもらっていた事例が各社の報道で次々に明らかになっている。(109ページより)

原発交付金は市民のためになってきたのか

もちろんこれは中央だけの話ではなく、地方では推進派の政治家らのもと、再稼働が進んでいる。その一例として、ここでは同書から、東日本大震災で津波と地震の被害を受けた宮城県の女川原発についての事例を紹介したい。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=大幅安、雇用統計・エヌビディア決算を

ビジネス

NY外為市場=ドル対ユーロ・円で上昇、経済指標の発

ワールド

トランプ氏、医療費削減に関する発表へ 数日から数週

ワールド

再送EU、ウクライナ支援で3案提示 欧州委員長「組
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中