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2024米大統領戦

バイデンがトランプ陣営から学ぶべきこれだけのこと

How to Beat Trump

2024年1月31日(水)13時10分
デービッド・ファリス(米ルーズベルト大学政治学部准教授)

候補者交代は時間切れ

バイデン陣営のウェブサイトは今のところ大統領選の争点について全く触れていない。陣営が2期目の政策課題を発表したとしても、有権者にはその声は届いていない。

まずは1期目の実績をアピールすること。インフレ抑制法の項目を事細かに述べる必要はない。政党としての民主党、政治家としてのバイデンが何を目指しているのか、大まかなビジョンを示すことだ。

多くの一般の民主党支持者はバイデン政権を「疲弊した部隊」と見ている。このイメージは、今すぐ払拭しなければならない。

陣営はまた、バイデンの支持率を下げ続けている物価高などの問題について、何らかのメッセージを出すべきだ。インフレ率などは改善しつつあるが、これまでに受けたダメージを挽回する必要がある。

もう一度言うが、必要なのは退屈な些事ではない。バイデン政権が何に価値を置いているかを伝えること。中東問題では、明らかにハマスに対するイスラエルの報復攻撃を容認していることが若年層のバイデン離れにつながっている。かといってイスラエル寄りの有権者の支持率アップにつながってはいない。

若年層が知りたいのは、2国家共存についてのバイデンの見解ではない。今すぐ殺戮をやめさせたいかどうか。バイデンは「イスラエルとガザにおける殺戮をやめさせるつもりだ」と言えばいい。そしてその言葉を裏付ける政策と行動を示せばいい。

移民問題についても、「民主党の緩すぎる移民政策が今の危機を招いた」といった見方が広く定着し、有権者のバイデン離れの大きな要因となっている。中南米諸国から殺到する移住希望者の審査など受け入れ体制の強化もさることながら、現行の移民政策に代わる新たなビジョンを示すことが切実に求められている。

既にバイデンは現職の大統領としては最高齢に達し、足元もおぼつかず、アリーナを埋め尽くした聴衆を感動させるような演説もできない。それは今更どうしようもない。

しかるべき手続きを踏んで、もっと有力な候補者を指名することはもはや時間的に無理。今後何か劇的な変化が起きない限り、民主党の大統領候補はバイデンであり、それが民主党に与えられた運命だ。

世論調査でトランプがリードしていることに驚き、嘆いたところで始まらない。バイデン陣営が感じよく訴えれば、有権者もいずれ分かってくれると期待しても無駄だ。

民主党に必要なのは勝つためのプラン。草の根の民主党支持者がそれを理解し、それに協力しなければならない。手遅れになる前に。

©2024 The Slate Group

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