最新記事
2024米大統領戦

バイデンがトランプ陣営から学ぶべきこれだけのこと

How to Beat Trump

2024年1月31日(水)13時10分
デービッド・ファリス(米ルーズベルト大学政治学部准教授)

240206p38_BDS_02.jpg

2021年1月6日にはトランプ支持者らが議事堂を襲撃する前代未聞の事態に LEAH MILLISーREUTERS

残念ながら、21年1月6日に過激なトランプ支持者たちが連邦議会議事堂を襲撃し、トランプが敗北した20年大統領選の結果を覆そうとした事件は、もはや「賞味期限」が切れている。現在進行中の刑事裁判でトランプに有罪判決が下れば、一部有権者の気持ちは変わるかもしれないが、あの日の出来事やトランプの役割をいくら蒸し返しても、まとまった集票には結び付かないだろう。

トランプ2期目の未来図

もっと有権者に示す必要があるのは、トランプが再び大統領になったら、アメリカの政治や社会や人々の暮らしにどのような変化が起きるのかを、頭ではなく、感覚的に理解してもらうことだ。

例えば、ゴールデンタイムに第2次トランプ政権のアメリカを描いた2分ほどのCMを流す。そのネタは極右団体「プロジェクト2025」がたっぷり提供してくれる。

まず、1807年に定められた反乱法に基づき、選挙結果に異議を唱える抗議行動は一切鎮圧される。トランプが日頃から「犯罪まみれの悪の巣窟」と呼ぶ都市には、米軍が派遣されるだろう。

人工妊娠中絶を受ける権利の否定も、バイデン陣営が繰り返し強調するべき「トランプのアメリカ」だ。

トランプが保守派の判事を複数指名したことにより、連邦最高裁では現在、9人の判事のうち6人が保守となっている。彼らが22年に、中絶を受ける権利は憲法が認める人権と認定した「ロー対ウェード判決」を破棄して以来、共和党が優勢の州では中絶を厳しく制限または禁止する州法が次々と誕生している。

さらに議会共和党は、連邦法によって全米で中絶を禁止しようとしている。それがどのような事態をもたらすかは想像するまでもなく、テキサス州やフロリダ州で現実に起きている事例を見れば分かる。同じ未来が自分の州にもやって来ると、有権者に分からせる必要がある。

人工妊娠中絶は、有権者の投票行動を大きく左右する争点であることが証明されている。22年に「ロー対ウェード判決」が破棄されて以来、中絶が直接争点となった選挙で、民主党は全勝しているのだ。

トランプをはじめとする右派は、弱者や学校に対する攻撃も激化させている。トランスジェンダーの生き方を否定し、公立学校で古くから読まれてきた本を有害だとして排除し、徒歩でアメリカを目指す移民たちが国境の川で溺れていても放置する──。

23年11月に全米各地で行われた教育委員会の選挙で、こうした文化戦争が最大の争点になった地区では民主党が圧勝した。移民への残酷な仕打ちも、有権者を反トランプで結集させられる争点だ。

SDGs
使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが「竹建築」の可能性に挑む理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指

ワールド

米との鉱物協定「真に対等」、ウクライナ早期批准=ゼ

ワールド

インド外相「カシミール襲撃犯に裁きを」、米国務長官

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官を国連大使に指名
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中