最新記事
F-16戦闘機

ルーマニアを飛び立ったF-16戦闘機がロシア軍を空爆?

NATO Ally Responds to Rumors of Secret F-16 Combat Mission in Ukraine

2024年1月31日(水)18時25分
デービッド・ブレナン
ルーマニア軍のF-16戦闘機

ルーマニア軍のF-16戦闘機(2023年11月) Inquam Photos/George Calin via REUTERS

<ロシア軍機の謎の撃墜が相次ぐため、既にアメリカ製のF-16戦闘機がウクライナ軍のてに渡っているのではないかと、様々な憶測が飛び交っている。果たして真相は>

NATO加盟国のルーマニアは、同国にある基地から飛び立ったF-16戦闘機が、ウクライナ南部を占領するロシア軍を空爆したとする真偽不明の情報を否定した。米国製のF-16戦闘機が数十機、ウクライナへと引き渡されるのを間近に控え、憶測や噂が飛び交うなかでのことだ。

NATO加盟国は、ウクライナ空軍の強化を支援するべく、F-16を供与する準備を進めている。F-16をめぐるこの最新の虚偽情報の出どころは、X(旧ツイッター)アカウント「Ukraine Front Lines」のようだ。

 

Ukraine Front Linesは何の証拠も提示せずに、ロシア連邦軍参謀本部はロシア連邦安全保障会議に対し、黒海の港湾都市コンスタンツァに近いルーマニアの空軍基地から発進したF-16Cが、ロシアに一部占領されているウクライナ南部のヘルソン州にあるロシア軍兵站地に「空爆した」と報告したという。

「モスクワは戦々恐々としている」と同アカウントは述べている。「ウクライナ国内の基地がF-16を配備する可能性はまだないが、準備が整った同盟国の基地と地上要員は早速、使われている」

【動画】F-16はなぜロシアに恐れられるのか──性能のすべて

Ukraine Front Linesの主張に対し、ルーマニア国防省は、みずからのXアカウント上で即座に異を唱えた。

「Xプラットフォーム上のアカウントに投稿されたフェイクニュースに注意してほしい。F-16C戦闘機が1月27日にコンスタンツァの第86空軍基地から発進し、ヘルソン市近くのロシア軍の集団を3時22分に空爆したと主張したというのはフェイクだ」

ウクライナ空軍のユーリ・イフナト報道官も1月30日、本誌に対して、この主張は誤りだと話した。

F-16が、ウクライナの空ですでに稼働していることを示す証拠はない。供与の第一弾がウクライナ国内に到着したことを示す証拠さえ存在しない。

だが、とりわけここ数か月、前線地帯において複数のロシア戦闘機が撃墜されていることから、憶測が広がっている。専門家が1月に本誌に語ったところによれば、そうした撃墜の説明としては、ウクライナが使用している地対空ミサイルシステム「パトリオット」のほうが可能性が高いという。

ウクライナ政府と支援国はF-16について、欧米が供与した他の兵器システムと同様に、ウクライナへの到着を隠しておきたいと考えている可能性がある。ロシア軍に対して最初に使用する際に、不意打ちの要素を確保するためにだ。ウクライナ軍のワレリー・ザルジニー総司令官の特別顧問を務めていたダニエル・ライスは12月にニューズウィークに、「ウクライナが新兵器を使ったときに初めて、ロシア軍はその威力を『痛感』することになる」と語っている。

ウクライナの操縦士と地上要員は現在、NATO加盟国からなる多国籍の支援連合の指導のもと、国外でF-16に関する訓練を受けている最中だ。最初のF-16戦闘機は、今後数週間もしくは数か月のうちに、ウクライナの管理下に引き渡されると見られている。

ウクライナ空軍のイフナトが1月に述べたところによれば、現在、ウクライナの操縦士6名がデンマークで訓練を受けており、春には戦闘に加わる予定だという。また、米国で訓練を受けているグループは、春以降には飛行任務の準備を終えると見込まれている。ただし、英国で訓練を受けている最も経験の浅いグループの準備が整うのは、2025年までかかる可能性がある。

(翻訳:ガリレオ)

ニューズウィーク日本版 世界も「老害」戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月25日号(11月18日発売)は「世界も『老害』戦争」特集。アメリカやヨーロッパでも若者が高齢者の「犠牲」に

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


ガジェット
仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、モバイルバッテリーがビジネスパーソンに最適な理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:労災被害者の韓国大統領、産業現場での事故

ワールド

高市首相、中国首相と会話の機会なし G20サミット

ワールド

米の和平案、ウィットコフ氏とクシュナー氏がロ特使と

ワールド

米長官らスイス到着、ウクライナ和平案協議へ 欧州も
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナゾ仕様」...「ここじゃできない!」
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 5
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    【銘柄】いま注目のフィンテック企業、ソーファイ・…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中