最新記事
中国経済

中国「信用バブル崩壊」へのカウントダウンが、「影の銀行」破綻から始まる

Chinese Shadows

2023年12月12日(火)14時00分
ジェームズ・パーマー(フォーリン・ポリシー誌副編集長)
未完成のビル

中国の未完成の超高層ビル Andy.LIU-shutterstock

<中国の大手資産運用会社「中植」が「深刻な債務超過」を発表。顧客の多くが中国共産党幹部とつながりのある裕福な個人や企業であるため、いかに軟着陸させるかが課題>

11月下旬、中国の大手資産運用会社の中植企業集団(中植)は自社が「深刻な債務超過」に陥ったと発表した。約2000億元(約4兆600億円)の保有資産に対し負債は推定4600億元(約9兆3400億円)。

数日後に捜査が始まり、12月1日には同社と関係の深い2社の会長2人と連絡が取れなくなった。


問題は、中植が中国のシャドーバンキング(影の銀行)の重要なプレーヤーであることだ。シャドーバンキングはノンバンク企業による融資や投資で、中国では盛んに行われている。

もっとも、中国の多面的な経済危機の中で破綻するシャドーバンクは、中植だけではなさそうだ。中国のシャドーバンキングにはマイクロファイナンスや信用保証会社、さらには質屋なども含まれ、3兆ドル規模に発展している。

中国の銀行は国有で融資業務に対する規制も厳しいが、シャドーバンキングは銀行が規制をかわす手段になっている。

2015年のある報告書は、中国のシャドーバンキングの3分の2が銀行からの資金と推定している。

「影」の濃さも多様で、中国最大のシャドーバンクの1つは政府系の資産運用会社とみられる。また、業務の多くはグレーゾーンで、当局から正式に承認されていない。

2008年の金融危機以降、中国では大規模な景気刺激策により信用が拡大し、シャドーバンキングの役割が急激に広がった。資金の大半は不動産市場に投資され、株式市場や商品市場にも流れ込んだ。

当局はリスクを認識しつつ「その場しのぎの規制」に追われたと、ローディアム・グループのアナリスト、ローガン・ライトは言う。

規制が強化されると銀行は手法を変え、通常の融資で提供していた資金もシャドーバンキングを経由するようになった。

ライトによると、2016年には「中国の規制当局は、金融システム内の資金の流れを監視するのに必死だった」。

ビジネス
暮らしの安全・安心は、事件になる前に守る時代へ。...JCBと連携し、新たな防犯インフラを築く「ヴァンガードスミス」の挑戦。
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

12月利下げは不要、今週の利下げも不要だった=米ダ

ビジネス

利下げでFRB信認揺らぐ恐れ、インフレリスク残存=

ワールド

イスラエル軍がガザで攻撃継続、3人死亡 停戦の脆弱

ビジネス

アマゾン株12%高、クラウド部門好調 AI競争で存
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 9
    【ロシア】本当に「時代遅れの兵器」か?「冷戦の亡…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中