最新記事
米中関係

【解説】関係修復は遠い夢? ジョー・バイデン&習近平会談の「歴史的価値」とは?

Biden and Xi Try the Personal Touch

2023年11月21日(火)13時00分
ロビー・グラマー(フォーリン・ポリシー誌外交担当記者)

第45代のドナルド・トランプは北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記と2度にわたる歴史的な首脳会談を行い、自慢の交渉力で北朝鮮に核武装を放棄させようと試みたが、こちらも無惨な失敗に終わった。

ここへきてバイデンが習との首脳外交に打って出たこと自体は、別に驚くに当たらない。もう何年も前から、バイデンはアメリカ外交で主導的な役割を果たしてきたからだ。09年から17年までの副大統領時代から、習とは面識があった。しかし、この経験知が裏目に出ることもある。

なにしろ両国間には構造的な難問が山積している。台湾をめぐる軍事的緊張、熾烈なスパイ合戦、習政権が内政面で急激に独裁色を強め、新疆ウイグル自治区でウイグル人を弾圧している事実、終わりなき貿易戦争、米政界における反中派の台頭などであり、いずれも解決の道筋を見通せないのが現実だ。

しかも来年には2つの不確定要素が待ち受けていて、悪くすれば今回の首脳会談の成果などは吹き飛んでしまう。

まずは1月に予定される台湾の総統選挙。台湾は実質的に独立しており、アメリカは外交的にも軍事的にも支援しているが、中国は台湾を自国の一部と見なしている。2つ目は11月の米大統領選挙。国際社会における中国の影響力と戦うことを外交政策の軸に据えるトランプが勝利する可能性は否定できない。

「パンダ外交」は継続する

それでも外交は外交──、文字どおり人が外へ出向いて交わるのが基本だ。ビデオ会議でも「対面」はできるが、一番大事なのは実際に顔を合わせること。日露戦争を終結させる1905年の和平協定を結ばせるまでに、ルーズベルトはロシアと日本の代表団と共にニューハンプシャー州で1カ月も過ごした。

ニクソンは1972年の歴史的訪中の際、当時の周恩来首相と丸々1週間を過ごし、米中国交正常化への道を開いた。カーターもメリーランド州の人里離れた大統領別邸でイスラエルとエジプトの指導者との交渉に丸2週間を費やし、ようやく歴史的なキャンプデービッド合意をまとめ上げたのだった。

現代外交、そして現代政治の特質として、今のアメリカ大統領にはそんなに長く出かける余裕がない。バイデンはAPECサミットで複数のアジア太平洋地域の首脳と会談したが、その日程はわずか2日だった。習との膝詰め談判も4時間で終わった。

がん検診
がんの早期発見を阻む「金額の壁」を取り払う──相互扶助の仕組みで「医療格差の是正」へ
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ガザ停戦でエジプトの役割を称賛 和平実

ワールド

トランプ氏、ゼレンスキー氏と17日会談 ウ当局者も

ワールド

トランプ氏、イランと取引に応じる用意 「テロ放棄が

ビジネス

JPモルガン、最大100億ドル投資へ 米安保に不可
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇敢な行動」の一部始終...「ヒーロー」とネット称賛
  • 4
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 9
    ウィリアムとキャサリン、結婚前の「最高すぎる関係…
  • 10
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル賞の部門はどれ?
  • 4
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中