最新記事
外交

NZ右派政権の誕生へ:対中外交の舞台裏と「疑惑」の新局面

Kiwi’s Pivot Right

2023年11月2日(木)15時56分
バーナード・ヒッキー(ジャーナリスト)

「ウイグル弾圧」を支持

ファイブアイズのパートナー諸国は、次期首相となるラクソンが、誰を外相に任命するかに注目している。もしブラウンリーを起用すれば、ニュージーランドはますます中国寄りになる可能性が高い。なにしろブラウンリーは、中国政府の新疆ウイグル自治区における政策を支持するという、欧米諸国ではあり得ない姿勢を示しているのだ。

国民党が前回08~17年に政権を握っていたとき、オーストラリアやイギリスの外交官らは、ニュージーランドのせいでファイブアイズは「5つの目」ではなく「4つの目と1つのウインク」になった(脅威を監視する体制が甘くなった)と皮肉ったものだ。

さらに当時のジョン・キー首相は08年、西側諸国として初めて中国と自由貿易協定を結び、中国との貿易拡大を訴えた。現在は企業役員を務めるキーは、首相時代も今も、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席とも定期的に会合を持つ間柄だ。

そんなキーの事実上の後継者であるラクソンは、前ニュージーランド航空CEOで、世界的な食品・日用品大手ユニリーバの経営幹部も務めていたせいか、対中国の安全保障協力よりも、中国との貿易拡大を重視している。

アーダーンも17年に首相に就任した際は、中国が10年以上にわたる最大の貿易相手国であることを理由に、トランプが牽引する反中姿勢にくみすることに慎重だった。

しかし、ニュージーランドの公安当局が地方政治への中国の干渉に目を光らせ、国の防衛戦略が中国をパートナーではなく脅威と見なすようになると、アーダーンの対中方針はより強硬なものとなった。

アーダーン政権の初代外相であるピーターズは、18年に国の太平洋政策「パシフィック・リセット」を打ち立て、同地域への支援を強化した。この政策は、中国の札束外交に対抗することが目的だったとみられている。

ブラウンリーは10月、国民党政権下では対中貿易に再び焦点が当てられるとの見方を示した。「過去15年間で、中国は実質的にわが国の主要貿易相手国になった。経済的な見地から、われわれはそれを危険にさらす立場にない」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

逮捕475人で大半が韓国籍、米で建設中の現代自工場

ワールド

FRB議長候補、ハセット・ウォーシュ・ウォーラーの

ワールド

アングル:雇用激減するメキシコ国境の町、トランプ関

ビジネス

米国株式市場=小幅安、景気先行き懸念が重し 利下げ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 5
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 6
    ロシア航空戦力の脆弱性が浮き彫りに...ウクライナ軍…
  • 7
    「ディズニー映画そのまま...」まさかの動物の友情を…
  • 8
    金価格が過去最高を更新、「異例の急騰」招いた要因…
  • 9
    ハイカーグループに向かってクマ猛ダッシュ、砂塵舞…
  • 10
    今なぜ「腹斜筋」なのか?...ブルース・リーのような…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 6
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 7
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 8
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨッ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にす…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中