最新記事
外交

NZ右派政権の誕生へ:対中外交の舞台裏と「疑惑」の新局面

Kiwi’s Pivot Right

2023年11月2日(木)15時56分
バーナード・ヒッキー(ジャーナリスト)

癒着疑惑の中国系議員

ブラウンリーは、国連が昨年、中国によるウイグル弾圧を非難する報告書を発表したことを受けて、中国の活動を擁護さえした。

報告書について彼は、「私の心を最も打ったのは、中国政府の活動の一部が新疆ウイグル自治区でのテロ活動を防止する目的だったと認識されたことだ」と述べ、中国政府の対テロ活動の背後にある意図は「ニュージーランドの法律の意図と大きく変わらない」と明言した。

ニュージーランドの対中姿勢は隣国のオーストラリアと比べ、国の規模が小さく中国が関係を断ちやすいことから、常により穏健だ。中国にとってニュージーランドの乳製品と食肉は他国からの輸入で代替が可能だが、オーストラリアの鉄鉱石はそうはいかない。

しかし、国民党の中国との癒着に対する疑念は、元国会議員のジャン・ヤンの問題が明るみに出て以来、強まっている。

11~20年まで議員を務めたヤンは、外交、国防、貿易の特別委員会の委員を務めていた。17年に地元メディアのニュースルームとフィナンシャル・タイムズ紙が共同で行った調査報道によると、中国生まれのヤンはニュージーランドに移住する前に15年間、中国軍の情報機関で働いていたという。

ヤンは、ブラウンリーと国民党党首だったサイモン・ブリッジスと、中国公安省の郭声琨(クオ・ションクン)元省長との北京での会合を手配したこともある。彼はニュージーランドの外務当局者に会合の計画を知らせず、関与もさせなかった。そして、自身に対する当局の調査結果が出る前に、20年に政界から引退した。

国民党はヤンに対する調査や、中国共産党とつながりのある国内の中国コミュニティーからの党への献金について見直したことがない。国の保安情報局が8月に発表した報告書で、中国の情報機関が内政干渉を行っていると非難しているにもかかわらず、だ。

国民党は議長候補ともみられているブラウンリーではなく、ピーターズを外相に任命する可能性もある。ニュージーランドの新たな外交政策を形成するために、アメリカとオーストラリアの当局者が誰を望んでいるかは明白だ。

From Foreign Policy Magazine

ニューズウィーク日本版 豪ワーホリ残酷物語
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月9日号(9月2日発売)は「豪ワーホリ残酷物語」特集。円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代――オーストラリアで搾取される若者のリアル

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

石破首相が退陣表明、米関税で区切り 複数の後任候補

ワールド

石破首相が辞任表明、米大統領令「一つの区切り」 総

ワールド

インドは中国に奪われず、トランプ氏が発言修正

ワールド

26年G20サミット、トランプ氏の米ゴルフ場で開催
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給与は「最低賃金の3分の1」以下、未払いも
  • 3
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接近する「超巨大生物」の姿に恐怖と驚きの声「手を仕舞って!」
  • 4
    ロシア航空戦力の脆弱性が浮き彫りに...ウクライナ軍…
  • 5
    金価格が過去最高を更新、「異例の急騰」招いた要因…
  • 6
    コスプレを生んだ日本と海外の文化相互作用
  • 7
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習…
  • 8
    「ディズニー映画そのまま...」まさかの動物の友情を…
  • 9
    今なぜ「腹斜筋」なのか?...ブルース・リーのような…
  • 10
    「日本語のクチコミは信じるな」...豪ワーホリ「悪徳…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 5
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 6
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 7
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 8
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 9
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 10
    「ディズニー映画そのまま...」まさかの動物の友情を…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中