最新記事
ロシア

ロシアはウクライナ侵攻で旅客機76機を失った──「不意打ちだった」露運輸相

Russia Says It Was 'Caught off Guard' After Country 'Loses' 76 Planes

2023年11月27日(月)17時30分
イザベル・バンブルーゲン

プーチンを乗せた大統領専用機。機体はイリューシンII-96(ロシア製、2018年) REUTERS/Martin Acosta

<制裁で欧米からのリース機の返還を求められ、交換部品も不足して、空の安全が犠牲に>

【動画】シベリアの原野に緊急着陸したロシア旅客機...緊迫した現場の様子

ウクライナ侵攻に対する欧米の制裁措置により、ロシアは旅客機76機を失ったと、ロシアのビタリー・サベリエフ運輸相は11月25日、述べた。どういうことだろうか。


国営通信社RIAノーボスチによれば、サベリエフは「前進するロシア」と題された展示イベントの開幕式に出席。その際に「(制裁は)予想外の不意打ちだった。わが国は合わせてジェット機76機を失った」と述べた。本誌は25日、ロシア外務省宛てのメールで説明を求めたが回答はなかった。

ロシアの航空業界がウクライナ侵攻による欧米の経済制裁で大きな打撃を受けているのは想像がつく。アメリカ政府はロシアの航空会社が運航する航空機を制裁対象にしているし、欧米の航空機メーカーもロシアに対する交換部品や新しい飛行機の納入を停止している。

またアメリカとEUはロシアの航空会社にリースした航空機の返還を求めているのだ。ロシア政府は航空機を返さずに済ませようと、国内の航空会社に対しリース機をロシア籍に登録し直すよう呼びかけた。これはつまり、重要なソフトウエアアップデートの適用も、耐空性を保証するために必要であり義務でもある保守点検もせずに航空機を飛ばすということでもあると、3月にブルームバーグは伝えている。

そのために欧米製の交換部品や機材の代替品を調達するすべも模索している。

危険「自給自足」

ロシア国営インターファクス通信によれば、ロシア運輸省は2030年までの国内航空産業の発展計画によって、外国製航空機の運行数は徐々に減少すると見込んでいる。また、航空会社は欧米製の部品の代替品の調達方法を見つけるとの見通しだという。

ロシアの独立系の航空専門家アナスタシア・ダガエワは3月、カーネギー国際平和財団のサイトでレポートを発表、「(ロシア政府は)ほんの数日の間に、国際路線や、外国製航空機のリース契約と技術サポート、他の航空会社とのパートナーシップ、外国製ソフトウエアや保険などを失った」と指摘した。

「現時点でロシアの民間航空にとって第一の目標は、2030年まで何とか事業を継続することだ」とダガエワは述べた。また、民間航空業界がすぐに瓦解することはないだろうが、自給自足傾向を強めていくだろうとも指摘した。それは、必然的に安全面の綱渡りを意味する。

ここ数カ月の間にロシア国内では、交換部品の不足が招いた技術的問題により、旅客機が緊急着陸する事例が相次いでいる。

9月には、黒海に面したリゾート地ソチからシベリア南西部オムスクに向かっていたウラル航空のエアバス320型機がノボシビルスクにある空港に緊急着陸しようとしたが、最終的に田園地帯に不時着することを余儀なくされた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中