最新記事
中国原潜

米海軍に戦略見直しを迫る中国の096型巨大ステルス原潜の怖さ

What Is China's Type 096? Next Gen Nuclear Submarine Haunting U.S. Navy

2023年10月12日(木)21時36分
エリー・クック

米海軍は太平洋における攻撃型原潜(SSN)や哨戒機、水中センサー、艦船の配備を増強するとみられる。米英豪3国の防衛協力の枠組みであるAUKUS(オークス)に基づき、英軍とオーストラリア軍も「こうした能力を増強するだろう」。だが、この海域における水中防衛では、米軍が中心的な役割を担うはずだと、ソールズベリーはみる。

中国が核軍事力を拡大しているため、アメリカは史上初めて、1つではなく、2つの「核攻撃力が拮抗する敵対国」、つまりロシアに加えて、中国とも対峙しなければならなくなると、英シンクタンク・国際戦略研究所(IISS)のティモシー・ライトは今年4月、ロイターに語った。

「そのためアメリカは防衛ラインを延長せざるを得ず、より多くの味方標的を危険にさらすことになり、通常及び核戦力の拡大も検討せざるを得なくなる」

これについて本誌は米海軍にメールでコメントを求めている。

米シンクタンク・戦略国際問題研究所によれば、中国は陸、海、空からの核兵器発射能力を高める「より広範な計画を推進」しており、096型開発への投資はその一環だ。

ロシアの原潜に勝る性能

096型が米海軍のオハイオ級や英海軍のバンガード級など西側の現世代の原潜に近いものか、あるいは米軍のコロンビア級や英軍のドレッドノート級のような建造中の原潜に近いかは、専門家にも分からないと、ソールズベリーは言う。096型のスペックについては、中国海軍は「当然ながら公開を渋って」いて、ほとんど明らかにされていないからだ。

今年に入って米議会に提出された報告書によると、米海軍は老朽化した14隻のオハイオ級原潜の後継艦としてコロンビア級の建造計画を「最優先」している。2027年にオハイオ級の退役が始まり、2031年にはコロンビア級の1番艦が就役する予定だ。

英海軍史上「最大かつ最強、技術的に最も進んだ潜水艦」とうたわれるドレッドノート級原潜は2030年代初めに就航を予定されている。

米海軍大学の中国海事研究所によれば、096型は全長150メートル、最高速度は29ノット、言い換えれば時速29海里(約54キロ)とみられる。

先行艦の094型に「著しい改良」が加えられた096型は、ロシア海軍のボレイ級やアクラ1攻撃型原潜よりも「優れている」と、同研究所は評価している。

 
今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

訂正(7日配信記事)-英アストラゼネカが新型コロナ

ワールド

EXCLUSIVE-チャットGPTなどAIモデルで

ビジネス

円安、輸入物価落ち着くとの前提弱める可能性=植田日

ワールド

中国製EVの氾濫阻止へ、欧州委員長が措置必要と表明
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グラフ」から強さを比べる

  • 4

    迫り来る「巨大竜巻」から逃げる家族が奇跡的に救出…

  • 5

    習近平が5年ぶり欧州訪問も「地政学的な緊張」は増す…

  • 6

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中