最新記事
中国原潜

米海軍に戦略見直しを迫る中国の096型巨大ステルス原潜の怖さ

What Is China's Type 096? Next Gen Nuclear Submarine Haunting U.S. Navy

2023年10月12日(木)21時36分
エリー・クック

原潜開発競争で世界のトップに? 写真は中国人民解放軍創設70周年の海軍パレードに参加した「長征1号級」(2019.年、青島) REUTERS/Jason Lee

<静かに深く潜行し、射程1万キロ超の核ミサイルを水中発射できる中国の次世代型原潜が太平洋のパワーバランスを揺さぶる>

中国は核ミサイルを水中発射できる次世代型の原子力潜水艦の建造計画を強力に進めており、アメリカをはじめ西側の軍事大国は太平洋における海軍戦略の見直しを迫られると、専門家は警告する。

<動画>中国が建造中の最新鋭096型原艦のすべて

中国海軍が開発を進めている096型の弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)は今も機密のベールに包まれている。だが入手できたわずかの情報を見る限り、これまでの中国の原潜と違って静かに潜行できるため西側のレーダーに探知されにくく、中国軍の水中発射による核攻撃能力を格段に高める性能を持つと、英シンクタンク・戦略地政学評議会の准フェロー、エマ・ソールズベリーは本誌に語った。

 

「096型の導入で、中国軍が保有する潜水艦が増えるだけではない。ステルス性も高まり、より広い範囲を射程に収める可能性がある。これらのいずれを取っても、米海軍は哨戒能力や配備の練り直しを迫られる」

米海軍大学付属の中国海事研究所は今年8月半ば、第三世代の096型原潜は「アメリカの水中防衛に甚大な影響を与える」との調査結果を発表した。

最新鋭のJL3ミサイルを搭載

米政府の過去の評価によれば、中国海軍は現在、晋級の094型原潜6隻を運用しているが、2030年までに096型2隻を就役させる予定で、最大8隻のSSBNを運用できるようになる。096型の導入により、中国の水中発射の核抑止力は大幅に高まると、ソールズベリーはみる。

094型も096型も「搭載するのは同じ巨浪(JL)3ミサイルだが、096型は094型よりはるかにスクリュー音が静かで、ステルス性が高い」と、ソールズベリーは言う。JL 3は、第三世代の潜水艦発射弾道ミサイルで推定射程は1万キロを超える。報道によれば、中国は既に094型の一部にJL 3の搭載し始めているようだ。

つまり、西側の海軍は、神出鬼没の新型艦を含め、これまでより多くの中国の原潜の動きに目を光らせる必要がある、ということだ。

「より多くのSSBNが、よりステルス性を高めて、偵察活動を始めれば、アメリカはこの海域に割り当てる軍事資産の見直しと配備増強を迫られる」と、ソールズベリーは言う。追尾されにくい新型艦を手に入れた中国海軍は、「彼らが南シナ海における『要塞』と見なす水域」の外側にまで活動範囲を広げかねないが、「JL 3は射程が十分に長いのでその必要はないし、最新鋭の原潜は自国の沿岸域に温存しておきたいだろうから、おそらくそこまでリスクを冒そうとはしないと思われるが......」。

試写会
『クィア/Queer』 ニューズウィーク日本版独占試写会 45名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税の影響で

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中