最新記事
中国軍

腐った軍幹部の更迭に本気...中国ロケット軍司令官を習近平が解任した本当の理由

Neverending Cycle of Purges

2023年8月15日(火)12時50分
ジェームズ・パーマー
ロケット軍前司令官の李玉超

ロケット軍前司令官の李玉超(リー・ユィチャオ、上段右端)は既に身柄拘束との情報も

<栄光ある建軍記念日の前に粛清...潤沢な予算あるところに汚職あり?>

どうやらまた、中国で新たな粛清があったらしい。8月1日の建軍記念日に先立ち、中国人民解放軍で核ミサイルの管理・運用に当たる「ロケット軍」の司令官と政治委員が更迭され、代わりに海軍出身の王厚斌(ワ ン・ホウピン)と空軍出身の徐西盛(シュイ・シーション)が昇格した。詳細は不明だが、「腐敗」を追及された可能性が高い。

もともと共産党中央軍事委員会の直属機関だった「第2砲兵部隊」を2015年に改組して発足したのが現在のロケット軍。陸海空の3軍とは別格に位置付けられている。そのトップ2人が更迭されたのは、共産党が軍部への監視と支配を一段と強化していることの表れだろう。

今のところ、どんな腐敗があったのかは明らかにされていない。1カ月ほど消息不明だった秦チン・カン剛外相(当時)の更迭が、7月25日になってようやく明らかになったときの状況と似ている。中国外務省の公式ウェブサイトを見ても、彼が今どのような状況に置かれているかは不明なままだ。

言うまでもないが、核ミサイルは極めて重要な軍事資産だ。台湾への威嚇になるし、いざとなればアジア太平洋地域に展開する米軍基地や艦船の攻撃にも使える。だからロケット軍には常に潤沢な資金がつぎ込まれてきた。そしてこれが、ロケット軍の幹部には甘い誘惑となったらしい。

軍の腐敗は国家の危機

もちろん、腐敗した官僚はどこにでもいる。だが軍部の腐敗は国の安全保障に壊滅的な影響を及ぼしかねない。ミサイルの維持費が横領され、有事に実戦で使える状態が保たれていなければ、党と国家の存立が脅かされる。

実際、筆者は14年頃にアメリカの情報筋から、中国軍では補給上のトラブルが日常化していると聞いたことがある。メンテナンスに投じる資金がないので、定期点検に備えて何基かのミサイルだけを使用可能な状態に整備しているという。また17年には中国政府の関係者も、弾薬を外国に横流ししている例が多々あると認めていた。

中国でも、ジャーナリストが公務員の汚職を暴露することは珍しくないが、軍隊内部の不正には手を出せない。筆者は過去に人民日報や環球時報(いずれも共産党の支配下にある)の記者たちから、軍については些細な情報でも厳しいチェックが入るという不満を聞いたことがある。

思えば昨年夏には、半導体産業の育成のために設けられた「国家大基金」の運用を担う機関の幹部が次々と更迭されていた。要するに、大金の動くところに不正あり。ロケット軍の幹部も、きっと同じ誘惑に負けたのだろう。

資産運用
「高市トレード」に「トランプ関税」......相場が荒れる今こそ投資家が目を向ける「世界通貨」とは
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米CB消費者信頼感指数、2月は91.2に上昇 雇用

ワールド

ウクライナ大統領「独立守った」、ロ侵攻から4年 G

ワールド

米、重要鉱物価格設定にAI活用検討 国防総省開発

ビジネス

AIが雇用市場を完全に覆すことはない=ウォラーFR
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 6
    3頭のクマがスキー客を猛追...ゲレンデで撮影された…
  • 7
    「極めて危険」──ゼレンスキー、ロシアにおける北朝…
  • 8
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 9
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 10
    武士はロマンで戦ったわけではない...命を懸けた「損…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中