最新記事
中国政治

中国外務省のサイトから「即データ全削除」の怪...新任外相の秦剛はなぜ解任されたのか?

The Missing Official

2023年8月1日(火)13時35分
ジェームズ・パーマー(フォーリン・ポリシー誌副編集長)
ブリンケン米国務長官, 秦剛(チン・カン)外相

6月18日に秦(右)はブリンケン米国務長官(左)と北京で会談していた U.S. DEPARTMENT OF STATEーUPI/AFLO

<噂の女性問題? 1カ月前から動静不明の末に公式発表された「解任」は、最初から「いなかった」工作まで...。周囲をざわつかせる「失脚劇」と厳しい「政治闘争」>

1カ月前から動静が公表されていなかった中国の秦剛(チン・カン)外相が、7月25日に解任された。

駐米大使だった秦は昨年12月に外相に就任したばかりだった。後任には前の外相だった王毅政治局委員が就いたが、一時的なつなぎ役とみられる。

 
 
 
 

秦は今後、閑職に追いやられる可能性もある。遠慮のない物言いで知られた外務省報道官の趙立堅(チャオ・リーチエン)も、1月に理由不明のまま異動させられた。

しかし秦の場合は、はるかに深刻な状況に直面しているかもしれない。中国外務省は解任を発表した当日のうちに、公式サイトから秦に関する情報を全て削除した。今年上半期の外務省の記録は、副外相らの活動一覧に差し替えられた。

外務省の定例会見では秦の動静に質問が集中したが、回答は曖昧なものばかりで、その質疑自体がサイトの会見記録に掲載されなかった。

秦が「双規」の対象になった可能性もある。これは、忠誠が疑われる共産党員を取り調べる超法規的なシステムのこと。その場合、秦は外部から完全に連絡の取れない状況に置かれている。

秦のような重要人物を突然解任するのは、賢明な判断ではないだろう。中国は諸外国に対して、自国の政府高官はいつ姿を消すか分からないと知らせただけでなく、政府は彼らを最初から「いなかった」ことにする工作まで行うと思わせてしまった。

秦が短い在任中に諸外国と交わした協議や合意は、今では何の意味も持たない。

では秦は何をしたのか。女性問題が噂されているが、それだけで解任ということはないだろう。現時点では健康上の理由も排除してよさそうだ。

そうなると可能性が高いのは、アメリカにいたときに現地の諜報機関に情報を提供した疑いが持たれたことだ。それが解任の理由なら、米中関係はさらに悪化する。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ

ワールド

米首都で34年ぶり軍事パレード、トランプ氏誕生日 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中