最新記事
中国政治

中国、秦剛外相を解任 王毅氏が復帰

2023年7月26日(水)10時15分
ロイター
中国の秦剛外相

中国全国人民代表大会(全人代、国会)常務委員会は25日の会議で、秦剛外相を解任し、前外相の王毅共産党政治局員を後任とする人事を決定した。国営メディアが報じた。写真は1月15日、カイロでエジプト外相と会談する秦剛氏(2023年 ロイター/Mohamed Abd El Ghany)

中国全国人民代表大会(全人代、国会)常務委員会は25日の会議で、秦剛外相(57)を解任し、前外相の王毅共産党政治局員(69)を後任とする人事を決定した。国営メディアが報じた。

新華社によると、習近平国家主席が主席令に署名した。

秦氏は駐米大使を務め、昨年12月に外相に就任したが、6月25日に北京で外交高官と会談したのを最後に約1カ月間、公の場に姿を現していなかった。

7月に入り、インドネシアで開催の東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会合も欠席。中国外務省は、健康上の理由で休んでいると説明したが詳細は不明で、さまざまな憶測が飛び交っていた。

国営メディアは秦氏が解任された理由を報じていない。中国外務省からコメントは得られていない。

中国当局者の動静不明は初めてではない。昨年には工業情報相だった肖亜慶氏が1カ月近く公の場に姿を現さず、汚職で調査されていたことが後に明らかになった。

秦氏は中国最年少の外相の一人で、習近平国家主席に近いとされる。06─14年に外務省報道官を2回務めたほか、習主席の外国首脳との会談の多くを調整するなどした。

王氏は2013年から22年まで外相を務めた。中国と米国がウクライナ、ロシア、台湾から貿易や技術論争に至る幅広い分野で対立する中、再度外相に就任する。

米国務省のパテル副報道官は25日の定例会見で、中国の外相を選ぶのは中国だとした上で、ブリンケン国務長官と王氏は複数回会談したことがあると指摘。「われわれは王外相や他の中国当局者との関与を続ける。対話ルートを維持することが極めて重要だ」と述べた。

ブリンケン氏は中国訪問中の6月18日に秦氏と会談し、協議継続のため同氏をワシントンに招いた。

王氏も招請されるかとの問いに対しパテル氏は「訪米するか発表するのは中国だ」と述べた。

オーストラリア国立大学の政治学者、ウェンティ・ソン氏は「王氏が適切な肩書きを持たずに外相レベルの会議に出席し続けるという事態を避けたかったのではないか」と指摘。シンガポール国立大学のジャ・イアン・チョン准教授(政治学)は「何の説明もないこと自体が、多くの疑問を投げかけている」とし、「誰もが不可欠な存在ではないことが示された。現在の政治システムの不透明さと予測不可能性に加え、恣意性さえも浮き彫りになった」と述べた。

米ワシントンのシンクタンク、スティムソン・センターの中国プログラムディレクター、ユン・スン氏は「王氏という人選は合理的」とし、「中国は安定感と信頼感を示すため、上級で権威があり、非の打ちどころのない人物を選ぶ必要がある」という見方を示した。

秦氏が国務委員としての職務を引き続き務めるかどうかは明確になっておらず、秦氏の政治的将来は不透明と指摘される。

米シカゴ大学のダリ・ヤン政治学教授は「説明なしに解任されたことで、秦氏に関する噂や憶測はそのままとどまる」とし、「彼の将来はうやむやとなり、中国の政治システムの不透明さを改めて浮き彫りにした」と述べた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ビジネス
暮らしの安全・安心は、事件になる前に守る時代へ。...JCBと連携し、新たな防犯インフラを築く「ヴァンガードスミス」の挑戦。
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ECB、金利変更の選択肢残すべき リスクに対応=仏

ビジネス

ECBは年内利下げせず、バークレイズとBofAが予

ビジネス

ユーロ圏10月消費者物価、前年比+2.1%にやや減

ワールド

エクソン、第3四半期利益が予想上回る 生産増が原油
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 5
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 9
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 7
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 8
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中