最新記事
中国政治

中国外務省のサイトから「即データ全削除」の怪...新任外相の秦剛はなぜ解任されたのか?

The Missing Official

2023年8月1日(火)13時35分
ジェームズ・パーマー(フォーリン・ポリシー誌副編集長)

秦の解任は突然ではあったが、衝撃的な出来事というほどではない。中国の外相は外交の最上位のポストではない。

最も上の役職は、王毅が務める中央外事工作委員会弁公室主任だ。中国共産党が率いる政治体制では、党の役職が政府の役職より重要になる。

 
 
 
 

共産党は揺るがないが

一部のアナリストは、秦が習近平(シー・チンピン)国家主席の特別なお気に入りで、秦の妻が習の夫人にうまく取り入ったことも彼の昇進を後押ししたと言う。

だが、秦の出世が特に早かったわけではない。彼は重要な役職をしっかりこなし、堅実に階段を上ってきた。その後ろには常に、彼のポストを奪おうとする者たちがいた。

中国共産党の最上層部には、奇妙な親密さがある。高官たちは今でも互いに近くに住むことが多く、配偶者が政治的な役割を果たすことも少なくない。

北京で党の重要会議が開かれる際は、中南海のかつての宮殿などに高官たちが1週間にわたって一緒に寝泊まりすることもある。

いま秦は、その親密さの矛盾を実感しているかもしれない。これまで親しい付き合いをしてきた人々が、彼が失脚したとなると、巻き込まれるのを恐れて真っ先に非難しているのが現実だろう。

秦のキャリア(そして恐らくは彼の自由)の終わりが、中国共産党を揺るがすことはない。

だが今回の一件は、共産党内部の政治闘争がどれだけ厳しいか、そして外国の政府当局者やビジネスマンが中国の特定の当局者に時間と労力をかけて関わることになぜリスクがあるのかを、改めて思い起こさせる。

From Foreign Policy Magazine

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、新たな相互関税率は8月1日発効=ホワイトハウス

ワールド

米特使、イスラエル首相と会談 8月1日にガザで支援

ビジネス

エヌビディア「自社半導体にバックドアなし」、脆弱性

ワールド

トランプ氏、8月8日までのウクライナ和平合意望む 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 9
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中