最新記事
北朝鮮

衛星の打ち上げ失敗はこれほどショック? 金正恩、最新映像の「やつれた」姿が話題...国民は「ため息」

2023年6月22日(木)18時34分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長

北朝鮮のミサイル発射を伝えるニュース(東京、2022年10月) Issei Kato-Reuters

<軍事偵察衛星の打ち上げ失敗を認めた北朝鮮だが、労働党の会議では憔悴したような金正恩の様子にも注目が集まった>

北朝鮮の朝鮮労働党中央委員会第8期第8回総会拡大会議が16日から18日にかけて行われ、先月の軍事偵察衛星の打ち上げ失敗を総括し、早期に再打ち上げを実施する方針を改めて示すなどした。

■【動画】顔はむくみ、目の周りにクマ、ほおには大きな吹き出物...金正恩の「やつれた」姿

本来、同会議は今月上旬の開催が予告されていたのだが、5月31日の衛星打ち上げ失敗の影響を受けたのか、やや遅れて開かれた。実際、会議ではこの間の軍事政策を巡り「最も重大な欠陥は、去る5月31日、宇宙開発部門で重大な戦略的事業である軍事偵察衛星の打ち上げに失敗したことである」と認めている。

また、韓国紙・朝鮮日報は、同会議に出席した金正恩総書記の写真について「顔がひどくむくみ、目の周りにはひどいクマができているように見える。ほおには大きな吹き出物もあった。専門家らは、ストレスや睡眠不足、過度な飲酒などで、金正恩氏の健康状態に問題が発生しているものとみられると指摘した」と報じた。実際、写真を見るとまったく覇気が感じられない。衛星の打ち上げ失敗がそんなに堪えたのだろうか。

(参考記事:北朝鮮「秘密パーティーのコンパニオン」に動員される女学生たちの涙

国民が打ち上げ失敗に肩を落とす理由

一方、ほとんどの北朝鮮国民は同会議の報道が出るまで、軍事偵察衛星の打ち上げも、その失敗も知らされていなかった。ただ、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、中国に人脈を持つ一部の貿易関係者は早くから打ち上げ失敗を知っていたとのことだが、彼らはその事実に加え、残骸が韓国軍によって回収されたことに大きなショックを受けているという。

ある北朝鮮関係者はRFAに対し、次のように語ったという。

「偵察衛星が失敗したとの情報に加え、技術開発水準も当局の宣伝と違って情けない水準にあるという証拠が出たとの噂も出回っている。戦略的武力の高度化を云々しながら(ミサイルや衛星を)立て続けに発射した結果、ひ弱な兵器体系レベルまですべてバレてしまったわけだ」

この関係者はまた、「衛星の打ち上げ失敗のニュースが広がると、一部の人々はため息をついている。最高指導部が核兵器発展方向と核能力増強路線を掲げている限り、民生問題が解決される見込みは希薄だと思うからだ」と付け加えた。つまりは金正恩氏が満足するまで核軍備などの拡大は続き、民生問題は後回しにされてしまうという意味だ。

(参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為

[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。

※当記事は「デイリーNKジャパン」からの転載記事です。

dailynklogo150.jpg



食と健康
消費者も販売員も健康に...「安全で美味しい」冷凍食品を届け続けて半世紀、その歩みと「オンリーワンの強み」
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

豪GDP、第2四半期は前年比+1.8%に加速 約2

ビジネス

午前の日経平均は反落、連休明けの米株安引き継ぐ 円

ワールド

スウェーデンのクラーナ、米IPOで最大12億700

ワールド

西側国家のパレスチナ国家承認、「2国家解決」に道=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 6
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 7
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 10
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中