最新記事
ロシア

ロシア潜水艦隊に落ちる影...その将来は? 専門家が想定する2つのシナリオ

RUSSIA’S WEAKENED NAVY

2023年5月16日(火)13時30分
エリー・クック
潜水艦

REUTERS/Yoruk Isik

<冷戦終了後もアメリカに次ぐ水準を持つといわれながら、経済制裁で新鋭艦建造も技術開発もままならず>

「まっとうな海軍なしには、ロシアに国家としての未来はない」──2009年、ロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領(当時)は海軍力増強の包括的な計画推進の必要性をこう力説した。

それから十有余年、ロシアの水上艦隊は期待に応えていない。昨年4月の黒海艦隊の旗艦「モスクワ」の沈没などメディアが派手に取り上げる惨事が続き、ロシア唯一の空母は度重なる火災にたたられるありさま。比較的新型で小型の一部の艦艇を除けば、ロシアの水上艦の多くはおおむね標準以下と見なされている。しかし、水面下に隠れるロシアの潜水艦は今も世界のトップクラスと言われている。

【動画】黒海艦隊の旗艦「モスクワ」の沈没

だが今のロシアにとってはウクライナ戦争に勝つことが全て。この戦争では出番が少ない潜水艦の性能向上は後回しにされかねず、西側の制裁も技術開発に歯止めをかけそうだ。

ロシアの潜水艦は水中性能ではアメリカに次ぐ水準だと、ジェームズ・フォゴ元米海軍大将は言う。NPO・核脅威イニシアチブによると、ロシアが保有する潜水艦は通常動力(ディーゼル機関)と原子力を合わせて推定58隻。うち17隻は攻撃型原子力潜水艦、9隻は巡航ミサイル搭載原子力潜水艦(SSGN)とみられる。

ロシアの潜水艦の中でも、ヤーセン型とその改良版であるヤーセンM型のSSGNは「今日のロシア海軍の至宝であり、ことによると今日のロシアの軍事技術の頂点だろう」と、米シンクタンク・ランド研究所の専門家エドワード・ガイストは本誌に話した。これらの潜水艦はロシアが誇る極超音速ミサイル「ツィルコン(ジルコン)」、それにウクライナ攻撃に使われた長距離巡航ミサイル「カリブル」を搭載できる。

「太平洋領域を含む海軍発展を」

ロシアの国営メディアは昨年12月、海軍に近々新たな原子力潜水艦が数隻、納入されると伝えた。12月に就役式が行われたボレイ型原潜「スボロフ大元帥」もそこに含まれる。

ロシアは潜水艦の攻撃能力向上に新たに資金を投入する方針を発表しており、国営メディアは今後数年のうちに核攻撃が可能な「超高速」魚雷を搭載できる潜水艦が数隻導入されると伝えている。

冷戦終結後は技術的・資金的な理由などで大型の水上艦の建造が困難になり、ロシア海軍は潜水艦部隊の強化に注力するようになったと、米海軍分析センターのドミトリー・ゴレンブルグは話す。

ロシア海軍はその前身の旧ソ連海軍時代から「水中」を強みとし、原潜の技術は今でも「世界のトップレベル」だと、英国際戦略研究所(IISS)のニック・チャイルズ上級研究員は言う。

事件
ニューズウィーク日本版メンバーシップ登録
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米特使、3日にイスラエル訪問 ネタニヤフ首相と会談

ワールド

インド26年度予算案、財政健全化の鈍化示す フィッ

ビジネス

ウォーシュ氏のFRB資産圧縮論、利下げ志向と両立せ

ワールド

シンガポール、宇宙機関を設立へ 世界的な投資急増に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗り物から「勝手に退出」する客の映像にSNS批判殺到
  • 2
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れるアメリカ」に向き合う「日本の戦略」とは?
  • 3
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 4
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 5
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」…
  • 6
    エプスタイン文書追加公開...ラトニック商務長官、ケ…
  • 7
    世界初、太陽光だけで走る完全自己充電バイク...イタ…
  • 8
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 9
    共和党の牙城が崩れた? テキサス州で民主党が数十…
  • 10
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中