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北朝鮮

性奴隷、違法売春、強制結婚...中国で売られる北朝鮮女性たち 「性的搾取は140億円規模」と報告書

2023年5月25日(木)17時51分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載
韓国で暮らす脱北者の女性

韓国で暮らす脱北者の女性(記事本文とは直接関係ありません、2012年7月撮影)

<中朝国境では、北朝鮮女性に「中国で働いてみないか」などと持ちかけ、脱北させた上で売り飛ばし、性風俗業で働かせる人身売買が横行している>

2019年からこの問題の調査を続けているオランダの国際法律事務所「グローバル・ライツ・コンプライアンス」は4月23日、人身売買の被害に遭った脱北女性に関する報告書を発表した。

同事務所が以前に出した報告書は、中朝国境沿いの地域にいる脱北者を15万人から20万人と推定したが、今回の報告書では、脱北女性だけでも数十万人に達し、その7〜8割が人身売買の被害者であるとした。

新型コロナウイルスの世界的な流行により、中国から出国できなくなったことから、2020年からの期間中だけでも数千人の脱北女性が性売買や強制結婚の被害に遭っている。

1人あたり数百ドルで売られた脱北女性は、中国人男性に買われ、強制結婚させられる。

吉林省延辺朝鮮族自治州の中国人男性と結婚させられたある脱北女性は、結婚して1年経っても子どもができなかったため、夫に暴力を振るわれるようになり、頭を蹴られ続けたことで、深刻なトラウマを抱えることになったと証言した。

(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩"残酷ショー"の衝撃場面

犯罪組織が手に入れるカネは年間1億500万ドル

人身売買により犯罪組織が手に入れるカネは、年間1億500万ドル(約140億8700万円)に達すると、報告書は推定している。

同事務所のソフィア・エバンジェロ弁護士は、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)とのインタビューで「北朝鮮の国境封鎖と中国の情報遮断により、中朝国境沿いの危険地域で起きている人権侵害が正確に伝わっていない。北朝鮮女性と少女たちは、性的、精神的虐待、性奴隷、強制労働に至る残忍な現実に置かれている」と述べた。

エバンジェロ氏はこれ以上、北朝鮮の女性と少女への蛮行を見過ごしてはならないとし、国際社会に声を上げるよう求めた。

一方で中国政府は、脱北者問題に関して中国と北朝鮮の間の問題だとして、第三国の介入を拒絶している。当該地域の公安当局は、性暴力も違法な性風俗業も取り締まらず、脱北者の取り締まりは熱心に行っている。

(参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為

[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。

※当記事は「デイリーNKジャパン」からの転載記事です。

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サイバー攻撃

中国当局の支援受けたハッカー集団が米重要インフラに最大規模のスパイ活動 情報機関やMSが指摘

2023年5月25日(木)18時05分
マイクロソフトのロゴ

西側の情報機関と米マイクロソフト(MS)は5月24日、国家支援を受けた中国のハッキンググループが通信や輸送拠点といった米国の重要インフラ機関にスパイ活動を行っていると発表した。写真はMSのロゴ。2016年6月、ロサンゼルスで撮影(2023年 ロイター/Lucy Nicholson)

西側の情報機関と米マイクロソフト(MS)は24日、国家支援を受けた中国のハッキンググループが通信や輸送拠点といった米国の重要インフラ機関にスパイ活動を行っていると発表した。

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イギリス

史上最悪の「迷惑動画」か...18歳TikToker、他人の住宅に不法侵入...逮捕される

2023年5月25日(木)17時10分
坂本 孝
玄関

@CatchUpFeed-Twitter

<過去には高齢者から犬を誘拐する動画も投稿>

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イギリス

【動画】TikToker、他人の住宅に不法侵入...史上最悪の「迷惑動画」か

2023年5月25日(木)16時30分
玄関

@CatchUpFeed-Twitter

<日本でもこの頃、飲食店などで撮影される「迷惑動画」がもはや社会問題化しているが、イギリスではMizzyというTikTokerが他人の住宅に不法侵入。大炎上の末に逮捕された。TikTokアカウントは削除されたものの、動画は今でもTwitterやRedditなどで視聴可能となっており、世界中の人々の怒りを買っている>

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女性支援団体に対する執拗な嫌がらせの実態が明らかに

2023年5月24日(水)14時20分
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(写真はイメージです) PeopleImages.com - Yuri A/shutterstock.

<有志による「女性支援を守るメディア連絡会」の調査で、団体スタッフや利用者に対するストーカーまがいの嫌がらせが横行し、女性支援の活動が危機にさらされていることがわかった>

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中国経済

なにかと話題の中国ファッション通販「SHEIN」、メキシコ工場建設を検討

2023年5月24日(水)11時30分
中国ファストファッション通販大手「SHEIN(シーイン)」のロゴ

中国発のファストファッション通販大手「SHEIN(シーイン)」は、同国以外の製造拠点の一つとしてメキシコでの工場建設を検討している。資料写真、2022年10月、シンガポール(2023年 ロイター/Chen Lin)

中国発のファストファッション通販大手「SHEIN(シーイン)」は、同国以外の製造拠点の一つとしてメキシコでの工場建設を検討している。複数の関係筋がロイターに明らかにした。

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