最新記事

韓国

韓国と日本酒の関わりとは?......農水省、韓国の日本酒輸入会社代表を「日本食普及の親善大使」に任命

2023年3月1日(水)17時54分
佐々木和義

日本酒の輸入が再開した翌12年4月、商標事件が発生する。日本酒コリアがライバル会社に対し、商標の使用差し止めを要求したのだ。日本酒コリアが使用差し止めを求めた商標は「辛口」「特撰」「上撰」など日本では商標登録が認められることはない用語で、韓国日本酒市場の黎明期に第三者の商標取得を防ぐため、全日本酒類や日本酒コリアなどの輸入会社が分担して登録したという。

商標の使用差し止め要求を受けた輸入会社は全日本酒類の徐正勳代表に相談した。徐代表から協力依頼を受けた筆者は、日本貿易振興機構ジェトロ・ソウル事務所の協力を仰ぐことにした。ジェトロソウル事務所が東京の本部に報告し、本部の回答を得てからマスコミに公表することにしたのだが、当時の朝日新聞ソウル支局長から筆者宛に、事件の詳細を教えて欲しいという電話が入った。そこでジェトロソウルと相談し、朝日新聞が積極的な報道支援を行うことを条件に詳細を伝えることにした。日本国内で大きく報道されると、輸出会社の要請を受けた日本酒コリアは商標権侵害の訴えを取り下げた。

富裕層、女性層、学生や若い会社員の3つに分けられる

韓国の日本酒市場は大きく3つに分けられる。
まずは富裕層だ。日本食レストランや居酒屋でダイギンジョウを注文し、飲み終えると、同じ酒を注文する。

次は女性層で、ジュンマイシュを好んで飲む。2000年代後半の居酒屋ブームを牽引したのも女性たちだった。2000年頃から女性の社会進出が拡大したが、酒を提供する店は、高額な会食向けレストランか韓国焼酎を提供する店が大半で、若いOLがアフターファイブを楽しむことができる飲食店は限られていた。彼女らは新たに登場したお洒落な日本式居酒屋を好んで利用した。

3番目は学生や若い会社員で、安価な日本酒を好んで飲む。人気があるのは米国産「ゲッケイカン」と「がんばれ父ちゃん」だ。韓国とFTAを締結している米国産の月桂冠は同等の日本酒と比べて安価であり、「がんばれ父ちゃん」は安価な日本酒を求めた韓国日本酒輸入会社の要望に新潟の酒造メーカーが応えたパック酒である。

韓国は居酒屋ブームが広がった2009年、日本と米国に次ぐ世界3位の日本酒消費大国に浮上した。2019年の日本製品不買運動で6位まで後退したが、2022年には日米中に続く4位となった。

輸出量は増えたが、1リットルあたりの輸出額は、日本酒輸出先上位15か国の平均1323円を大きく下回る622円で、日本国内の平均出荷額736円をも下回る。高価格帯の日本酒輸出が増えるなか、韓国は安価な日本酒を輸入しているのだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中