最新記事

韓国

韓国と日本酒の関わりとは?......農水省、韓国の日本酒輸入会社代表を「日本食普及の親善大使」に任命

2023年3月1日(水)17時54分
佐々木和義

韓国の日本酒市場は大きく3つ(富裕層、女性層、学生や若い会社員)に分けられる。Taka1022-shutterstock

<昨年、韓国は米国と中国に次ぐ世界3位の日本酒消費大国に返り咲いた......>

農林水産省は、韓国で日本酒の輸入を手掛ける全日本酒類の徐正勳(ソ・ジョンフン)代表理事と日本酒コリアの楊秉錫(ヤン・ビョンソク)代表理事を「日本食普及の親善大使」に任命し、2月7日、ソウルの日本大使館公報文化院で任命式が行われた。

農水省は2015年から「日本食普及の親善大使」を任命しており、今年度、世界で16人を任命した。昨年、韓国が輸入した日本酒は日本製品不買運動と新型コロナウイルスが重なった2020年の1027ドルの85%増の1899万ドルで、韓国は米国と中国に次ぐ世界3位の日本酒消費大国に返り咲いた。

2009年には米国に次ぐ世界2位の日本酒輸入国に

韓国政府が日本文化の解放策の一貫で日本酒の輸入を認めた翌年の1994年、京都の月桂冠が日韓合弁の韓国月桂冠を設立した。

当時、日本食はホテルなどで供される高級料理で、庶民が口にする機会はほとんどなく、韓国月桂冠は庶民向けの日本食チェーン「かつら」を展開した。

1999年に43キロリットルだった日本の韓国向け輸出は、2003年に100キロリットルを超えた後急増、2007年1000キロリットルに達し、韓国は、2009年には1954リットルを輸入して米国に次ぐ世界2位の日本酒輸入大国に浮上した。

居酒屋や日本酒販売コーナーを拡大したデパートが銘柄数を競うようになった2008年、銘柄を増やす必要に迫られた韓国月桂冠は合弁を解消、商号を全日本酒類に改めた。

韓国の中堅企業や個人が続々と日本酒事業や居酒屋などの日本食事業に参入した2008年から09年、日本からの進出も相次いだ。

アサヒビールを輸入していたロッテアサヒ酒類が日本酒の輸入を開始し、鳥取県境港市の老舗日本酒蔵元・千代むすびが輸入子会社を設立した。居酒屋チェーンでは、てっぺんやモンテローザが進出、居酒屋以外でもかっぱ寿司を展開するカッパクリエイトやあんどスシロー、CoCo壱番屋などが進出した。

東日本大震災で、輸入を全面的に停止

右肩上がりを続けた日本酒の韓国向け輸出だったが、2011年4月、全面的に停止する。
東日本大震災に伴う福島原発の事故を受け、韓国政府は日本から食品を輸入する際、日本政府機関が発行する証明書の提出を義務付けた。当時、韓国政府が求めた証明書は日本では商工会議所が発行しており、政府機関が発行する制度はなかった。

日本政府は商工会議所が発行する証明書の認定を求めたが、韓国政府が拒絶した。そこで、在韓日本大使館に出向していた農林水産省と厚生労働省の職員などを中心に制度作りが行われ、同年6月、国の委任を受けた都道府県が証明書の発行を開始した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

アングル:中国で値下げ競争激化、デフレ長期化懸念 

ワールド

米政権、農場やホテルでの不法移民摘発一時停止を指示

ワールド

焦点:イスラエルのイラン攻撃、真の目標は「体制転換

ワールド

イランとイスラエル、再び相互に攻撃 テヘラン空港に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 9
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 10
    先進国なのに「出生率2.84」の衝撃...イスラエルだけ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 8
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中