最新記事

日本社会

食事をしない若者が増えている、その深刻な背景

2023年2月15日(水)10時15分
舞田敏彦(教育社会学者)
空っぽの皿

コロナ禍のなかで「1日ゼロ食」という人の数も増加している Suradech14/iStock.

<健康な生活の根幹である「食」を、若年層の多くが節約のために疎かにしている>

日本人のタンパク質の摂取量が1950年代と同水準になっているという(日経新聞WEB、2023年2月9日)。記事のグラフを見ると、2019年の1日の摂取量平均は70グラムほどで、戦後初期の頃と同じくらいだ。国の推奨値は超えているものの、良好な健康状態を維持するのに必要な目標値には届いていないとされる。

物価高に見舞われている2023年現在では、たんぱく質の摂取量はもっと落ちているだろう。肉や魚は値上がりし、安価な米や麺類でお腹を満たす人が増えているのではないか。炭水化物の摂り過ぎは肥満につながるので、栄養の偏りによる健康不良も懸念される。

偏食を通り越して欠食、すなわち食事をしないという人もいる。2011年の総務省『社会生活基本調査』によると、調査対象の平日に食事をした国民(15歳以上)の割合は99.4%。裏返すと、0.6%の人は1日中何も食べなかったことになる。この数値は2016年では0.7%、2021年では1.8%と上がってきている。コロナ禍もあってか、近年の伸び幅は大きい。

年齢層別に見ると、もっと高い値が出てくる。<表1>は、1日ゼロ食の人の割合を年齢層別に示したものだ。

data230215-chart01.png

1日1度も食事をしない人の割合は、若年層ほど高い。お金がなかったり、減量志向が強かったりするためだろう。15~24歳を見ると、2016年の0.6%から2021年の4.0%まで跳ね上がっている。25人に1人が「1日ゼロ食」という衝撃的なデータだ。

コロナ禍の影響を推測するのは容易い。国民全体に生活困窮が広がっているが、とりわけ若年層では1日ゼロ食の者が無視できない数字になってきている。最近、風呂なしの物件が若者の間で人気と聞くが、シンプル志向の強まりといった肯定的なトーンで語るべきではない。貧困化により生活の基盤の「住」や、生きるための「食」をも切り詰めなければならない。まぎれもない社会問題だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ南部、医療機関向け燃料あと3日で枯渇 WHOが

ワールド

米、対イスラエル弾薬供給一時停止 ラファ侵攻計画踏

ビジネス

米経済の減速必要、インフレ率2%回帰に向け=ボスト

ワールド

中国国家主席、セルビアと「共通の未来」 東欧と関係
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    習近平が5年ぶり欧州訪問も「地政学的な緊張」は増すばかり

  • 4

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 7

    迫り来る「巨大竜巻」から逃げる家族が奇跡的に救出…

  • 8

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中