最新記事

アフガニスタン

「マネキンも捕らえられ、閉じ込められている」タリバン支配下のマネキンは斬首を免れた......

2023年1月17日(火)19時30分
佐藤太郎

タリバンの宗教警察「勧善懲悪省(悪徳美徳省)」は、すべてのマネキンを店の窓から撤去するか、首を切り落とさなければならないと命じた...... YouTube/ @channelnewsasia

<アフガニスタンの首都カブール中の女性服店のマネキンは、頭部に布袋で覆われたり、黒いビニール袋で包まれたりして、街は異様な光景を呈している。その理由は......>

タリバン政権の支配のもと、アフガニスタンの首都カブール中の女性服店のマネキンは、頭部に布袋で覆われたり、黒いビニール袋で包まれたりして、街は異様な光景を呈している。頭巾をかぶったマネキンは、タリバンの純血主義的なアフガニスタン支配を象徴するようだ。

しかし見方を変えると、カブールのアパレル小売業者による、ささやかな抵抗と創造性の表れとも捉えられる。

ある店のマネキンの頭部は、着用している伝統的なドレスと同じ素材で作られた袋のようなものを被せられている。紫色のドレスのマネキンは、同じ紫色の頭巾を。もう一人は金の刺繍が施された赤いドレスで、顔には赤いベルベットの仮面、頭には優雅な金の冠をかぶっている。

「マネキンの頭にプラスチックや変なものをかぶせると、ショーウインドーも店も見栄えが悪くなってしまうから」と、店のオーナーのバシルさんは言う。他のオーナーと同様、彼は報復を恐れてファーストネームのみを名乗ることを条件にAP通信の取材に応じた。

>>■■【動画】カブールの様子「タリバンの政権下のマネキンは斬首を免れた」

当初はマネキンの斬首を命じられた

地元メディアによると、2021年8月に政権を奪取して間もなく、タリバンの宗教警察である「勧善懲悪省(悪徳美徳省)」は、すべてのマネキンを店の窓から撤去するか、首を切り落とさなければならないと命じたという。

偶像として崇拝される可能性があるため、人間の形をした像や画像を禁じるイスラム法の厳格な解釈に基づく命令だった。

服の売り手の中には、これに従う者もいたが、反発の声も上がった。

マネキン斬首令に異論を唱えた衣料品店のオーナーたちは、服をきちんと展示できなくなる、あるいは貴重なマネキンを傷つけなければならなくなると訴え、タリバンに規則の修正を求めた。これを受け、タリバンは命令を修正し、マネキンの頭を覆うことを許可した。

マネキンの斬首は免れたものの、店主たちの次なる課題は、頭部を覆ったマネキンの見栄えを如何によく見せるか、ということだ。タリバンへの従属と、顧客へのアピールのバランスに頭を悩ませた。

その結果行き着いたのが、マネキンが着用するドレスとセットのヘッドピースのようにも見えるスタイリングだ。

別の店主ハキムさんは、マネキンの頭にアルミホイルをかぶせた。光に反射し煌めくアルミ箔をマネキンの頭にかぶせることで、商品に華やかさを添える意図だ。「この脅威と禁止令をチャンスと思い、マネキンが以前より魅力的に見えるようにしました」

経済低迷でアパレル小売の売り上げは半減

アフガニスタンでは結婚式はタリバン以前から結婚式は男女別だった。保守的な同国では結婚式は女性にとって最も美しく装う、心踊る場だった。

タリバン政権下では、結婚式は以前以上に数少ない社交の場となった。しかし、経済は低迷し国民は貧しさで苦しんでいる。限りあるわずかな収入を、結婚式に費やすことはなくなってきている。

>>■■【動画】カブールの様子「タリバンの政権下のマネキンは斬首を免れた」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

次年度国債発行、30年債の優先減額求める声=財務省

ビジネス

韓国ネイバー傘下企業、国内最大の仮想通貨取引所を買

ワールド

中国、与那国島ミサイル計画に警告 「台湾で一線越え

ビジネス

JPモルガン、カナリーワーフに巨大な英本社ビル新設
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 10
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中