最新記事

銃乱射

多くの銃乱射事件で民間人が犯人制圧、または発砲 それでも「銃はいらない」?

2022年12月26日(月)14時09分
シーリーン・アリ
フィエロ

自宅前で事件当時の様子を記者に語るフィエロ(11月21日) HELEN H. RICHRDSONーMEDIANEWS GROUPーTHE DENVER POST/GETTY IMAGES

<アメリカで多発する銃乱射事件。実はその多くにおいて、民間人が犯人を制圧、または発砲している。もし事件に巻き込まれた場合、とるべき行動とは>

リチャード・フィエロは一夜にして英雄になった。11月19日深夜、コロラド州コロラドスプリングスのLGBTQ(性的少数者)が集まるクラブで起きた銃乱射事件の犯人を取り押さえたからだ。

銃声が聞こえるとすぐ、フィエロは犯人に向かって突進。床に引き倒し、犯人が持っていた銃で殴り付けた。

警察が到着した時点で犯人は無抵抗状態。フィエロは殺してしまったかと心配になった。22歳の犯人は病院に搬送され、被害者5人についての第1級殺人などの罪状で起訴された。

フィエロはイラクに3回、アフガニスタンに1回派遣された経験がある軍歴15年の元陸軍士官。銃乱射事件の犯人を非武装の民間人が取り押さえた例は思いのほか多い。

2000~21年にアメリカで発生した銃乱射事件は少なくとも433件。249件は警察の到着前に事件が終わっている。そのうち64件は現場に居合わせた民間人が犯人を制圧、または発砲している。

この数字はテキサス州立大学の高度法執行迅速対応訓練センター(ALERRT)がFBIと協力してまとめたもの。ナイフや車を使ったケースを含め、一般市民が犯人を取り押さえる割合は10%強だ。「かなり大きな数字だと思う」と、研究主幹のハンター・マータンデールは言う。

18年にテネシー州ナッシュビル郊外の飲食店で起きた銃乱射事件では、ジェームズ・ショーが犯人のライフルを確保した。ショーは最初、店のトイレに逃げようとしたが、弾丸が肘をかすめたときに覚悟を決め、犯人が動きを止めた隙を突いてトイレのドアで強打し、ライフルを奪い取ることに成功した。

コロラドスプリングスの事件で死亡が確認されたのは現時点で5人。フィエロの奮闘がなければ、それをはるかに超える犠牲者が出ていたはずだ。16年にフロリダ州オーランドのナイトクラブで起きた事件では、非番の警官が犯人と銃撃戦を展開したにもかかわらず、49人が死亡した。

FBIによると、銃乱射事件は多くの場合、5分以内に終わる。国土安全保障省は、犯人が至近距離にいて現場から逃げられない場合、犯人の制圧を試みるよう民間人に推奨している。

人生最悪の瞬間の1つに遭遇した人々には極めて高いハードルだ。「もちろん、そうしなくても非難できない」と、マータンデールは言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 5
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 6
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 7
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 8
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 9
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 10
    「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中