最新記事

ツイッター

フォロワーが1日で100倍に増える注目のなか、私はマスクに嫌われ、ツイッターをクビになった

'Elon Musk Fired Me in a Tweet'

2022年12月5日(月)16時26分
エリック・フロンへーファー(ソフトウエアエンジニア)

イーロン・マスクは千里眼の持ち主?(写真は11月14日、インドネシアのバリで開かれたB20サミットに登場したマスク)Willy Kurniawan-REUTERS

<「くそっ」と私は思った。マスクには1億2000万人近いツイッターフォロワーがいる。彼への返信ならともかく、引用ツイートまで見るとは思ってもみなかった>

私はツイッターで8年間、ソフトウエア技術者として働いた。辞めるまでの6年間は、アンドロイド用のツイッターアプリの開発部門で、ツイート班の技術リーダーを務めていた。

技術者へのフォローが行き届いた職場で、みんな協力的で、製品に熱い情熱を持っていた。ツイッターが好きだからそこで働いていたのだと思う。私自身は入社時に初めてアカウントを作ったが、入社時からツイッターのヘビーユーザーという人も多かった。

キャリア面でも支援を受けているという実感があり、せっせと働けばその分報われるという思いがあった。技術者がすべてのプログラムを書き、技術管理職は部下のキャリアアップの後押しと、チーム内の意思疎通をよくすることに力を注いでいた。かつてのツイッターは今よりも、メンターの働きに重きを置いていた。「昇進したい」と言えば、管理職はキャリアアップの機会を探す手伝いをしてくれた。

(テスラCEOのイーロン・)マスクがツイッターを買収しようとしているという記事を読んだ時は、当面様子見だなと思った。ひそかに喜んでいる同僚もいたけれど、多くはとても不安がっていた。凍結アカウントの復活とか、今後の経営方針とか、どういったコンテンツを認めたいかといった点についての彼のツイートに不安を感じた。

221205myturn.png
まだツイッター社員だった2020年の筆者       ERIC FROHNHOEFER

タイムラインを流れる同僚たちの別れの挨拶

私が最も懸念していたのはワークライフバランスだ。テクノロジー業界は狭い世界で、私はマスクが経営するスペースXの複数の従業員から、(猛烈に働くことを求められる)社風のせいで2年で燃え尽きたという話を聞いていた。そんなのはごめんだ。

私はリモートで働いているので、職場の噂話は以前ほど耳に入らない。マスクによる買収が決まったのを知ったのも、ニューヨーク・タイムズの記事でだった。それから数日、イーロンからもその関係者からもメール1本来なかった。11月3日になってようやく、かなりの数の従業員のレイオフが予定されていて、翌日の午前9時までに対象者には連絡が来るというメールを受け取った。

メールを読んで私は、タイミングが悪いなと思った。ホリデーシーズンを前に、企業の採用も経済も動きが鈍い時期だ。だがなるようにしかならない。私はみんなに、何とかなるさと話した。

だがそれからすぐに、同僚たちの別れの挨拶が飛び交うようになった。次から次へと「やあ、クビになったよ」というツイートが流れるのだ。同僚と明日も一緒に働けるのかどうかを、私たちはこんな形で知ったわけだ。

悲しかった。長く一緒にやってきた人もいたし、彼らと一緒に働くのが楽しかった。こんなにたくさんの人々が去って行くのを見るのはショックだった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECBが金利据え置き、4会合連続 インフレ見通し一

ワールド

ロシア中銀、欧州の銀行も提訴の構え 凍結資産利用を

ビジネス

英中銀、5対4の僅差で0.25%利下げ決定 今後の

ワールド

IS、豪銃乱射事件「誇りの源」と投稿 犯行声明は出
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 2
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 6
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 7
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 8
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 9
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 10
    欧米諸国とは全く様相が異なる、日本・韓国の男女別…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中