最新記事

事故

「ISS史上最も深刻な事故のひとつ」ソユーズ冷却水漏れ、フライトコンピュータに影響のおそれ

2022年12月23日(金)15時18分
青葉やまと

ソユーズの冷却水漏れの後、ISSのロボットアームで調査した...... NASA

<冷却不良によって徐々に熱が蓄積し、クルーの帰還に使われるフライト・コンピュータが正常に稼働しないおそれがある>

ロシアが運用し、国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングしている有人宇宙船「ソユーズMS-22」において、冷却水漏れが発生した。

12月15日に起きたこの事故について、米技術サイトのアーズ・テクニカが、現在までに判明している事態と影響を解説している。フライト・コンピュータに影響が及ぶおそれもあり、同サイトで宇宙関連を担当する編集者のエリック・バーガー氏は、ISS史上「最も深刻なインシデントのひとつ」だと見る。

>>■■【動画】「ソユーズMS-22」が水漏れを起こしている! 発見から3時間後

船体を冷やす冷却水、ほぼ完全に失われたか

漏洩は15日、ソユーズの居住区画外部で発生した。機材を収容しているスペースの外装が破損し、その際にセンサーが冷却システムの圧力低下を検知した。ソユーズの冷却水漏れは人の手で止めることができず、現在までに冷却水はほぼ完全に失われたとの見方がある。

冷却水漏れの原因として、外部から飛来した物体により冷却水ラインが損傷したと考えられている。米CBSニュースは、スペースデブリあるいはマイクロメテオロイド(ごく小さな天然の流星物質)が衝突した可能性があると報じている。ISSの船外カメラの映像からは、小さな穴が確認された。

現在、NASAおよびロシア国営宇宙開発企業のロスコスモスは、事故の影響を評価している。

米テックサイトのアーズ・テクニカは、冷却水の喪失により、ソユーズが帰還する軌道を計算するためのフライト・コンピュータが過熱するおそれがあるとする独自の分析を示している。

記事は「宇宙ステーションに滞在中の7人の宇宙飛行士にただちに危険が及ぶことはない」と前置きしながらも、「これは四半世紀近く使用されているこの軌道上のラボの歴史において、最も深刻な事故のひとつだ」と指摘する。

クルー帰還時の軌道計算に影響のおそれ

折しもISSは現在、軌道面と太陽との角度を示す「太陽ベータ角」が大きい時期にある。これはISS全体の日照時間が長いことを意味しており、船体が過熱しやすい状況だ。アーズ・テクニカは、「このことから、時間が経つにつれフライト・コンピューターがオーバーヒートするおそれがある」と分析している。

また、フライト・コンピューターは船体の深部に設置されているため、どこかのハッチを開けて冷気を送り込むのも難しい状況だという。さらに、現在確認されている問題は冷却水漏れのみだが、スペースデブリやマイクロメテオロイドがほかの装備を貫いた可能性も否定できない。

>>■■【動画】「ソユーズMS-22」が水漏れを起こしている! 発見から3時間後

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

LNGカナダが増産、アジア向け輸出拡大 イラン攻撃

ワールド

豪中銀、来週利上げの見方強まる エコノミストが予想

ビジネス

米コールズ、26年売上高は最大2%減 利益見通しも

ワールド

イスラエル軍、レバノンで違法に白リン弾使用=国際人
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開された皇太子夫妻の写真が話題に
  • 4
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 5
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 6
    「一日中見てられる...」元プロゴルファー女性の「目…
  • 7
    人間ダンサーを連れて「圧巻のパフォーマンス」...こ…
  • 8
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 9
    ホルムズ海峡封鎖、石油危機より怖い「肥料ショック」
  • 10
    イランがドバイ国際空港にドローン攻撃...爆発の瞬間…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 4
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中