最新記事

日本社会

「パパ活より街に立つほうが効率的に稼げる」 25歳・実家暮らしの彼女が歌舞伎町にたたずむ訳は?

2022年12月23日(金)18時00分
中村淳彦(ノンフィクションライター) *PRESIDENT Onlineからの転載

「時間は人による。早い人は10分とかで終わる。長い人でも30分とか。でも、私はそんなに長くかかる人に当たったことないかな。早くイカせるためにアソコを絞めつけるとかやっている子もいるけど、私は何もしてない。すぐ終わる人は、シンプルにイクのが早いだけ」

メインは40代、みんなお金がない

割り切ったセックスだと、ガツガツして体力がある若者より、オヤジのほうがいいという女性もいる。彼女はどうなのだろうか。

「相手の年齢とかあんまり関係ないかな。たしかに若い人って体力があるから時間がかかる。だから回転したい人はおじさん相手でもそれなりに早く終わる人のほうがありがたい。それと若い人のほうが意外と長い時間一緒にいたい、みたいなのが多い。その見極めが難しい。若い人でも早く終わる人もいるし、やってみないとわからない」

客のメインは40代、みんなお金がないらしい。

「スーツ姿のサラリーマンでもお金がない。30代のちょっとスラッとした感じのサラリーマンもいるけど、そういう人たちでも1万円って人が多い。風俗より安いから立ちんぼってことだと思う」

売春価格1万5000円は風俗やパパ活と比較しても、立ちんぼの過去相場を振り返っても、圧倒的に安い。それでも街娼をするのは、短い時間で数をこなすことで売り上げを伸ばすという考え方のようだ。

男性の属性が中小企業経営者が中心のパパ活の場合、彼女だったら5万円以上は取れる。しかし、食事→ホテルというデートの形になるので時間がかかる。

長期的な人間関係を築くパパ活のほうが男性の質はいいし安全だが、大久保病院前に立っている彼女たちは、"不特定多数で手っ取り早く安価"という立ちんぼを選択している。

ここの相場はあまりに安い

『歌舞伎町と貧困女子』「ムカつくのが『ここで立っているコのなかでいちばんかわいい』って声かけして、2って言ったら、2かあ......って渋る奴。そんなのばかり。みんなお金ないし、ケチ。あと、パパ活はワクワクメールでやってたけど、ドタキャンが多すぎ。待ち合わせ場所まで行って洋服まで教えたのにドタキャン。そんなのばかり。だからサイトは使いたくない。

あとは顔がわからないのは怖い。立ちんぼだと顔がわかるのはメリットで、この人とは行きたくないと思ったら断れる。ただ相場が安すぎる、それが一番の不満です」

星野恵梨香の話は終わった。今日は立つつもりで歌舞伎町に来ているので、大久保病院前に戻るという。お礼を言って5000円を渡すと、彼女は病院前に戻って行った。

お会計をして筆者たちも病院前に戻ってみると、彼女はすでにオヤジと立ち話をしていた。オヤジは星野恵梨香と必死に何か交渉するが、すぐに諦めて隣の女の子に移った。おそらく1万円と食い下がったのだろう、と思った。

中村淳彦

ノンフィクションライター
1972年生まれ。著書に『名前のない女たち』シリーズ(宝島社)、『東京貧困女子。』(東洋経済新報社)、『崩壊する介護現場』(ベストセラーズ)、『日本の風俗嬢』(新潮新書)『歌舞伎町と貧困女子』(宝島社)など。現実を可視化するために、貧困、虐待、精神疾患、借金、自傷、人身売買、介護、AV女優、風俗などさまざまな社会問題を取材し、執筆を行う。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
presidentonline.jpg




今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

金総書記、プーチン氏に新年メッセージ 朝ロ同盟を称

ワールド

タイとカンボジアが停戦で合意、72時間 紛争再燃に

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 9
    【クイズ】世界で最も1人当たりの「ワイン消費量」が…
  • 10
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中