「我々の銀河は1ピクセル!」......20万個の銀河示す壮大な宇宙の地図が作成された

2022年12月29日(木)15時25分
青葉やまと

デザイン情報メディアのデザイン・ブームも、本マップを取り上げている。作成にはホプキンス大の天文学者たちに加え、3Dデザイナーのニキータ・シュタルクマン氏が協力した。同サイトもまた、科学的な正確性と一般へのわかりやすさの両立を評価している。専門家向けだったデータを平易な形でビジュアライズした点にプロジェクトの価値があると言えそうだ。

製作に携わったホプキンス大のメナード教授は、マップ作りの動機を次のように説明している。

「幼い頃から私は、星や星雲、銀河といった天文学の写真から、大変な刺激を受けてきました。そしていま、私たち自身が新たなタイプの画を想像し、人々を刺激する番が来たのです」

「世界中の天体物理学者が、何年もかけてこうしたデータを分析しています。数え切れないほどの科学論文や発見につながってきました。しかし、美しく、科学的に正確で、なおかつ科学者でない人でも見られるような地図を作るために時間を投じる人は、これまでありませんでした。私たちの目標は、宇宙の本当の姿をすべての人々に届けることなのです」

>>■■【動画】圧巻! 20万個の銀河示す壮大な宇宙の地図

既存の観測プロジェクトの成果を活用

観測の元データとして、アメリカを中心に運営され日本の機関も参加している「スローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)」の成果が活用された。

米ニューメキシコ州の山奥、澄んだ空気を持つアパッチポイント天文台に、SDSS用の観測装置が設けられている。主望遠鏡は広視野専用として設計され、狭い領域の拡大を主目的とする多くの天体望遠鏡と異なり、天空の広い領域を一度に観測することができる。

この主望遠鏡に加え、複数の天体用CCDカメラなどが観測をサポートする。天体画像により天体の位置を把握し、分光観測による赤方偏移量から距離を算出して記録するプロジェクトだ。

天空の一定領域を網羅的に観測する調査をサーベイ観測と呼ぶが、SDSSは天文学史上最も重要なサーベイ・プロジェクトのひとつに数えられている。第1期調査が完了した2005年までに全天の25%以上の領域を観測し、3億個以上の天体を記録した。

天文学の分野ではすでに名が知られているSDSSプロジェクトだが、その貴重なデータは専門家の注目を集めるに留まっていた。ホプキンス大の天文学者と3Dデザイナーという異分野の逸材がタッグを組んだことで、宇宙の神秘を広く一般にアピールするマップが完成したようだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

独新政権、EU財政ルールは歳出拡大計画の足かせと想

ビジネス

ヤマハ発、25年12月期の営業利益見通し据え置き 

ビジネス

ロシュ、7億ドルで米ノースカロライナ州に生産施設設

ワールド

イラン、プーチン・ロシア大統領の訪問で準備=通信社
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映った「殺気」
  • 3
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 4
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 5
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 6
    「出直し」韓国大統領選で、与党の候補者選びが大分…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    「がっかり」「私なら別れる」...マラソン大会で恋人…
  • 9
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 10
    ハーネスがお尻に...ジップラインで思い出を残そうと…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 9
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 10
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中