最新記事

米政治

トランプはついに党のお荷物......そして「バイデン外交2.0」始動はいかに?

BIDEN’S FREER HAND

2022年11月18日(金)13時50分
マイケル・ハーシュ


トランプは党のお荷物に

ちなみに共和党では、トランプが支援した選挙否定派(前回の大統領選に不正があったというトランプの根拠なき主張に賛同する一派)の候補が何人も当選しているが、トランプと手を組んだせいで落選した候補のほうが多い。

注目を集めた上院選では、ペンシルベニア州のメフメット・オズやニューハンプシャー州のドン・ボルダックが敗れた。下院選では少なくとも8人のトランプ推薦候補が落選し、州知事選でも選挙否定派の大物たちが敗退した。

開票速報を見て、公然とトランプ排除を求め始めた保守派の論客もいる。投資会社シタデルを率い、共和党への巨額献金で知られるケン・グリフィンは、今こそトランプを切って「前へ進むべき」だと述べた。

長らくトランプべったりだったFOXニュースに登場した保守系コラムニストのマーク・ティーセンは、現職バイデンの支持率が低迷し、高インフレが続くなかで共和党が圧勝できなかったのは「大惨事」だと述べた。

FOXと同じ系列の大衆紙ニューヨーク・ポストは翌日の1面にフロリダ州知事選で圧勝したロン・デサンティスの写真を掲げ、「デ・フューチャー」という大見出しを添えた。共和党の未来(フューチャー)はデサンティスにあり、というわけだ(デサンティスは次期大統領選に出馬意欲を示している)。

アメリカの敵、とりわけロシアは共和党の圧勝を願い、そうなればアメリカ社会の分断が一段と深まり、ウクライナへの支援も止まると信じていた。

ロシア国内の報道を精査しているジュリア・デービスによれば、モスクワ大学の政治学者アンドレイ・シドロフは投票日の直前に、こう語っていた。

「トランプはアメリカ社会にたくさんの憎悪をかき立てる。アメリカ人が憎み合えば憎み合うほど、わが国には好都合だ」

アメリカの同盟国はどうか。乱暴で孤立主義、同盟関係も国際条約も尊重しないトランプ政治から、アメリカがようやく脱却する兆しが見えて安堵したというところか。

「トランプの最大の功績は」と政治学者のブラウンは言った。「自分がいれば勝てると共和党に信じ込ませたことだ」。しかし今度の選挙で、その化けの皮が剝がれた。

From Foreign Policy Magazine

20240528issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月28日号(5月21日発売)は「スマホ・アプリ健康術」特集。健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、日本産食品の輸入規制撤廃求める 日中首脳

ワールド

台湾の頼総統、中国軍事演習終了後にあらためて相互理

ビジネス

ロシア事業手掛ける欧州の銀行は多くのリスクに直面=

ビジネス

ECB、利下げの必要性でコンセンサス高まる=伊中銀
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    アウディーイウカ近郊の「地雷原」に突っ込んだロシ…

  • 5

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 6

    なぜ? 大胆なマタニティルックを次々披露するヘイリ…

  • 7

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

  • 8

    批判浴びる「女子バスケ界の新星」を激励...ケイトリ…

  • 9

    カミラ王妃が「メーガン妃の結婚」について語ったこ…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 4

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 7

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 8

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 9

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 10

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中