最新記事

米政治

トランプはついに党のお荷物......そして「バイデン外交2.0」始動はいかに?

BIDEN’S FREER HAND

2022年11月18日(金)13時50分
マイケル・ハーシュ


それに、もしも共和党の議席数が下院の過半数(218議席)をわずかに上回る程度であれば、下院の常任委員会や調査委員会を共和党議員で固めることは難しくなる。規則上、1人の議員が6つ以上の委員会に籍を置くことは禁じられているからだ。

ベルト教授によれば、「こういう制約がある以上、少しでも極右の議員が造反すれば、マッカーシーの議会運営は難しくなる」。

対中関係はさらに悪化か

そうは言っても、下院の多数派となった共和党の声が大きくなり、世界に好ましからざる影響を及ぼす事態は十分に考えられる。

とりわけ懸念されるのは対中関係だ。主要な常任委員会の委員長は共和党議員が務めることになるが、例えば外交委員会の委員長候補とされるマイケル・マコール議員は、台湾防衛への一段の関与を求めている。

また軍事委員会委員長の呼び声が高いマイク・ロジャーズ議員は、インド太平洋地域における防衛協力体制の強化に熱心だ。こうした強硬派が実権を握れば、台湾訪問で物議を醸した現下院議長のナンシー・ペロシ以上に中国側を刺激し、米中間の対話を困難にしかねない。

ただし今のバイデン政権は中国に対し、共和党並みの厳しい姿勢を見せている。オーストラリアと日本の軍備増強を支援し、日米豪印4カ国による新たな安全保障の枠組みを形成し、中国に対するアメリカの優位を維持するため、露骨に保護主義的な産業政策も推進している。

バイデン政権は技術移転の規制を強化することで「中国の能力を広範かつ根本的に阻止する決意を示した。......今後はバイオテクノロジーや金融など、およそ戦略的と見なされる分野で一段と厳しい措置を繰り出すだろう」と、中国問題に詳しいジョン・ベイトマンは指摘している。

ユーラシア・グループのアナ・アシュトンも選挙の翌日に、「中国政策に関して共和党とバイデン政権の間に大きな差はない」と述べた。

運よく民主党が(ぎりぎりでも)上院の支配権を維持できれば、バイデンは連邦裁判所の判事などの重要な人事で主導権を握れる。だが「下院は余計に御し難く、過激な妨害に走るようになる」と予測するのは政治学者のララ・ブラウンだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ウェイモ、来年自動運転タクシーをラスベガスなど3

ビジネス

欧州の銀行、米ドル資金に対する依存度高まる=EBA

ワールド

トランプ氏、NY市長選でクオモ氏支持訴え マムダニ

ワールド

ウクライナ、武器輸出・共同生産拠点を独とデンマーク
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中