最新記事

仮想通貨

ビットコインの持続「不可能性」は時間とともに増大している...3つの基準で検証の結果

Bitcoin Mining Is Unsustainable

2022年11月11日(金)18時18分
ジェス・トムソン(本誌科学担当)

221115p64_MNG_02.jpg

ECLIPSE_IMAGES/GETTY IMAGES

その結果、ビットコイン・マイニングによるCO2排出量は、2016~21年に1ビットコイン当たり0.9トンから113トンと、126倍に増加したことが判明した。また、1ビットコインのマイニングで1万1314ドルの気候損害が発生し、世界全体の損害総額は120億ドルを超えることも分かったという。

論文によると、マイニングは時価1ドル分のビットコイン当たり最大1.56ドルの気候変動による損害を世界にもたらし、16~21年の気候損害の平均は市場価値の35%に達した。この数字は20年5月にピークに達し、市場価値の156%を記録している。

一方、牛肉生産の気候損害は市場価値の33%、金鉱の損害は4%にすぎない(天然ガスと原油から生成されるガソリンの気候損害は、それぞれ市場価値の46%と41%)。

「マイニングに参加する多くのビットコインマイナーの居場所はIPアドレスから分かる」と、ジョーンズは語る。

「そこから、ある国で一日に採掘されるコイン数を推定できる。その国の電力構成に関する情報と、採掘に必要なエネルギー量を組み合わせれば、排出量を推定できる。さらにCO2排出量とCO2の社会的コストから、気候変動損害を割り出せる」

環境負荷を99%削減する方法が

ビットコインは数ある仮想通貨のうち最も環境被害が大きいと、ジョーンズは指摘する。「最悪なのはエネルギー排出量が圧倒的に大きいこと。16~21年のようにビットコイン・マイニングがPoW方式のまま化石燃料電源に依存し続けるなら、環境負荷は今後も縮小しない。むしろ気候変動への影響は時間と共に増大している。ビットコインは持続不可能になりつつある」

現在のビットコインのマイニング方法が、仮想通貨を生成する唯一の方法というわけではない。ジョーンズによると、気候への影響が劇的に少ない別の承認方式に切り替えることは可能だという。

「エネルギー使用量と気候変動への影響を軽減できる生成プロセスは存在する。プルーフ・オブ・ステーク(PoS)だ。イーサリアムは最近、それに切り替えたばかりだ」

PoS型システムでは、ブロックチェーンネットワークのメンバーが選ばれ、手数料と引き換えに新しいブロックの取引を承認する。彼らの誠実さの保証として、承認者は自分の仮想通貨を担保に出さなければならない。それによって承認プロセスをごまかそうとするインセンティブをなくせるというわけだ。

PoSはPoWよりもはるかに少ない計算能力しか必要としないため、消費エネルギーもずっと少なくて済む。イーサリアムは9月にこの方式に切り替えた結果、エネルギー消費量を99%削減したという。しかし、PoWほど安全ではないとして、このシステムに反対する人々もいる。

それでもジョーンズは、「ビットコインも切り替え可能だ」と言う。「そうすれば気候変動への影響はほとんど無視できるものになる」

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀が金利据え置き、5対4の僅差 12月利下げの

ビジネス

ユーロ圏小売売上高、9月は前月比0.1%減 予想外

ビジネス

日産、通期純損益予想を再び見送り 4━9月期は22

ビジネス

ドイツ金融監督庁、JPモルガンに過去最大の罰金 5
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの前に現れた「強力すぎるライバル」にSNS爆笑
  • 4
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 5
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 6
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 7
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 8
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 9
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中