最新記事

中国

文革で学習能力が欠如する習近平ら「一強」体制が、うかうかできない理由とは?

Finally, Red Guards Over China

2022年11月9日(水)13時37分
練乙錚(リアン・イーゼン、経済学者、香港出身のコラムニスト)
習近平

10月27日に陝西省の延安革命記念館を訪問した習近平と新指導部の面々 XINHUA/AFLO

<前国家主席・胡錦濤を強制退場させて恥をかかせ、「異分子の一掃」を世界に誇示。しかし、共青団派だけでなく、江沢民派も反撃の機会を虎視眈々と探る、中国の政治勢力図とは?>

中国共産党の全国大会が終わった翌日(10月23日)、第20期中央委員会の第1回全体会議(一中全会)が開かれた。むろん、結果は予想どおり習近平(シー・チンピン)の大勝利。新たに選出された205人の中央委員によって任期5年、3期目の党総書記に推挙され、指導部(党中央)も側近で固めた。

24人の政治局員からは反対派を一掃した。現首相の李克強(リー・コーチアン)を筆頭とする中国共産主義青年団(共青団)の出身者と、そのシンパと目される人物は排除された。

異分子の一掃という意味では、その前日にも象徴的な政治ドラマが演じられた。党大会の閉幕式典の途中で、前国家主席の胡錦濤(フー・チンタオ)が無理やり退場させられた。人民大会堂に集まった2300人超の党員と世界各国の報道陣の眼前で、習は自らの前任者で、共青団派の頭目でもある胡に恥をかかせたのである。

これで終わりではない。習近平はこの先の数カ月で、議会に相当する全国人民代表大会(全人代)の常務委員会も側近で固め、国家主席としても3期目に入り、自分に代わって国政の泥をかぶる首相も指名することになる。

ただし、それでもまだ「習が全権を握った」と言い切るのは時期尚早だ。なぜか。宿敵の共青団派はまだたくさんいて、おとなしく敗北を認めるとは思えないからだ。

共青団は14~28歳の若者を対象とする党内の巨大なエリート養成機関だ。約8000万人が所属しており、ここで優秀な成績を上げれば党員として出世街道を歩める。

その対極には、「太子党」と呼ばれる革命第1世代の党指導者たちの子弟がいる。太子たちは共青団を経由しなくても入党できる。彼らから見ると、共青団の人間は傑出した革命家の血筋を引かない「平民」であり、だからこそ若いうちに徹底的な洗脳教育を受ける必要がある。

結果、太子党と共青団派は互いをさげすむ間柄となった。貴族のような立場の太子党は相手を執事のように扱い、共青団派は太子党を甘やかされた無能なパラサイトと見なす。そんな関係が、派閥間の対立を醸成することになった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

東京ガス、25年3月期は減益予想 純利益は半減に 

ワールド

「全インドネシア人のため闘う」、プラボウォ次期大統

ビジネス

中国市場、顧客需要などに対応できなければ地位維持は

ビジネス

IMF借款、上乗せ金利が中低所得国に重圧 債務危機
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中