最新記事

東南アジア

東ティモール11番目の加盟国に ASEAN首脳会議で合意

2022年11月12日(土)21時30分
大塚智彦
国連のアナン事務総長(左)とシャナナ・グスマン大統領(右)

2002年の東ティモール独立記念式典で国連のアナン事務総長(左)とシャナナ・グスマン大統領(右) REUTERS

<独立後の平和維持に日本の自衛隊も派遣された国がASEANの一員へ>

カンボジアのプノンペンで開催中の東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳会議は11月11日に発表した声明で、新たな加盟国として東ティモールを迎えることで合意に達したことを明らかにした。

これで東ティモールは11番目のASEAN加盟国となることが決まった。

東ティモールは旧インドネシア領で長年の独立を求める武装闘争の末、1999年の国民投票を経て2002年5月20日に独立を果たした。

独立を果たした東ティモールは2011年からASEANへの加盟申請を出し続けていたが、新規加盟をするには全加盟国の同意が必要。東ティモールに対しては財政的基盤が不十分とする意見が出されるなど、これまで延期が続いていた。

しかし今年7月19日にインドネシアを訪問した東ティモールのラモス・ホルタ大統領がジョコ・ウィドド大統領に改めてASEAN加盟への要望を再度伝え、今回の首脳会議以後カンボジアから議長国を引き継ぐインドネシアが中心となって早期加盟実現で根回しを行い、念願のASEAN加盟が実現する運びとなったという。

武装闘争の末に果たした独立

長らくポルトガルの植民地だった東ティモールは太平洋戦争での日本軍占領を経て戦後再びポルトガル領となった。その後1975年にポルトガル政府が植民地を放棄した直後にいったん独立を宣言したものの、ほぼ同時にインドネシア軍が侵攻し全土制圧に乗り出した。

その結果、1976年にインドネシア政府が27番目の州(当時)として東ティモールの併合を宣言。これ以降はインドネシア領となったが、独立を目指す政治組織「フレテリン」とその武装部門である「ファリンテル」によるインドネシア抵抗運動が続くことになった。

1991年には中心都市ディリで行われた平和的なデモにインドネシア軍が一方的に発砲し、住民約400人が死亡する「サンタクルス事件」が発生。国際社会の注目を浴びたが、それまでの武装闘争は大きく報じられることもなく「忘れられた独立紛争」と言われた。

独立を問う住民投票実施

1998年にインドネシアのスハルト大統領による長期独裁政権が崩壊し、後任のハビビ大統領は東ティモールのインドネシア併合の是非を問う住民投票の実施を決めた。このときハビビ大統領はそれまでのインドネシア併合時代に進んだインフラ整備や経済援助などから「住民の多くはインドネシアに留まることを選択する」と踏んでいたとされる。

しかし国連の主導で1999年8月に実施された住民投票は、投票率98.6%と関心が高く、独立を望む住民が78.5%と多数になり、以後独立に向けた準備が国連と共に進んだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米最高裁、トランス兵士排除の大統領命令を当面容認

ビジネス

米財務長官と通商代表、中国高官と今週スイスで会談へ

ビジネス

世界のM&A、4月は20年余りぶりの低水準 米相互

ビジネス

米国株式市場=続落、ダウ389ドル安 関税巡る不透
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗と思え...できる管理職は何と言われる?
  • 4
    分かり合えなかったあの兄を、一刻も早く持ち運べる…
  • 5
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 6
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 7
    「欧州のリーダー」として再浮上? イギリスが存在感…
  • 8
    首都は3日で陥落できるはずが...「プーチンの大誤算…
  • 9
    メーガン妃の「現代的子育て」が注目される理由...「…
  • 10
    ザポリージャ州の「ロシア軍司令部」にHIMARS攻撃...…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 3
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1位はアメリカ、2位は意外にも
  • 4
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中