最新記事

テロ

ミャンマー、久保田氏収監の刑務所で爆発2回 爆弾テロか8人死亡

2022年10月20日(木)12時05分
大塚智彦

これまでに爆弾事件の犯行声明は出ていないが、治安当局では反軍政を掲げて抵抗を続ける武装市民組織「国民防衛軍(PDF)」による犯行の可能性が高いとみて捜査を続けている。

インセイン刑務所は房内の劣悪な環境、刑務官による恣意的な暴力行為などでミャンマー国内で最も悪名高い刑務所といわれている。

2021年4月に「虚偽のニュースを流した罪」で逮捕され約1カ月後に釈放、国外退去になった日本人フリージャーナリスト北角祐樹氏もこのインセイン刑務所に収監されていた。また2022年7月30日に入国管理法違反などで逮捕された久保田徹氏も入管法、扇動罪、電子取引法違反による裁判で禁固10年の判決を受けてインセイン刑務所で現在服役中だ。

これまでのところ収監中、服役中の人に死傷者が出ているとの情報はなく、久保田氏については日本大使館が安全を確認した。

受刑者の「頼みの綱」がなくなる?

警備が厳重なことでも知られるインセイン刑務所の内部で起きた爆弾テロ事件だけに、今後治安当局や刑務所側による差し入れに来た家族とその荷物への検査が厳重になることは間違いない。場合によっては当面差し入れ禁止の措置も予想され、家族からの食料などの差し入れが「頼みの綱」「生きる力」とする受刑者などの反発が起きる可能性もある。

またこの爆弾テロが反軍政のPDFの犯行とすれば、PDFがその影響力を次第に強めていることの証左ともいえ、ミン・アウン・フライン国軍司令官以下軍政には大きなショックであることは間違いないだろう。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「金は関税の対象にならず」、懸念払しょく

ワールド

欧州首脳、米ロ首脳会談控え13日にトランプ氏と協議

ワールド

ゼレンスキー氏「ロシアに戦争終結の用意ない」、制裁

ワールド

ロ・ウクライナ、和平へ「領土交換」必要 プーチン氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入する切実な理由
  • 2
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客を30分間も足止めした「予想外の犯人」にネット騒然
  • 3
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 4
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 5
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 6
    なぜ「あなたの筋トレ」は伸び悩んでいるのか?...筋…
  • 7
    「靴を脱いでください」と言われ続けて100億足...ア…
  • 8
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 9
    「古い火力発電所をデータセンターに転換」構想がWin…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 5
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 7
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 8
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 9
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 10
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中