最新記事

ウクライナ

ロシアの「住民投票」はパルチザンが潰す 一度拉致されたメリトポリ市長語る

Ukraine Partisans Can Block Russia's August 'Referendums': Front-Line Mayor

2022年8月9日(火)17時16分
デービッド・ブレナン

一度はロシア軍に拉致されたが特別作戦で奪還されたフェドロフ news.com.au/YouTube

<ロシアが占領地域の併合に向けて予定している住民投票を妨害すべく南部一帯のパルチザンが計画を立てている>

ウクライナへの侵攻を続けるロシアは、ロシア軍による占領を正当化するため8月中にも住民投票を実施しようとしている。3月にロシア軍に制圧された南部メリトポリのイバン・フェドロフ市長によれば、ウクライナ南部一帯のパルチザン(ゲリラ戦を展開する非正規部隊)が、ロシア政府による偽りの住民投票を邪魔する計画を立てているという。

3月にロシア軍に頭に袋をかぶされて拉致され、その後ウクライナ軍の特別作戦によって解放されたフェドロフは、地元のパルチザンや特殊部隊、諜報員が妨害行為を行い、ザポリッジャ(ザポリージャ)やヘルソン州でロシアが傀儡政権「人民共和国」を発足させるのを阻止する、と本誌に語った。

フェドロフは8月8日、南部の前線に近いザポリージャの街から電話取材に応じ、「ロシアは8月中に住民投票を実施したい考えだが、それは不可能だろう」と主張した。

「過去2週間、ロシアはメリトポリの住民を対象に、ロシアを支持する用意がある者がどれだけいるか調査を行ってきた」と彼は言う。「その結果、今もメリトポリに残っている市民のうち、ロシアを支持することに同意した者は全体の10%に満たなかった」

「ロシアはメリトポリでもそのほかの占領地域でも、住民の支持を得ていない。メリトポリにおいて、彼らの旗色はきわめて悪い」

「ロシア化」ローラー作戦

7月までは、ロシアは9月半ばに住民投票を実施する計画だという報道が多かった。だが米シンクタンクの戦争研究所は、ロシアが計画を前倒しして、8月中に住民投票を実施する可能性があると指摘している。

フロシアは占領地域での支配を強固なものにしようと苦慮し、地元住民を弾圧していると主張。3月以降、メリトポリでは約500人の住民がロシアに連れ去られたという。

「ロシアは今では、投票を1日で終わらせるのではなく、1週間かけて実施したいと考えている」と指摘。「投票所を設けるのではなく、係員が住民のアパートを訪れて『ロシア人になりたいか』と尋ねる方法を取ることを考えている」

この方法ならば、ロシア当局が嘘や脅しで投票結果を都合のいいように操り、占領地域の独立を宣言させて、ロシアに併合することができるだろうとフェドロフは述べた。

本誌はこの件についてロシア外務省にコメントを求めたが、本記事の発行時点までに返答はなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米中古住宅仮契約指数、10月は1.9%上昇 ローン

ビジネス

米9月小売売上高0.2%増、予想下回る 消費失速を

ビジネス

米9月PPI、前年比2.7%上昇 エネルギー商品高

ワールド

欧州司法裁、同性婚の域内承認命じる ポーランドを批
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    使っていたら変更を! 「使用頻度の高いパスワード」…
  • 10
    トランプの脅威から祖国を守るため、「環境派」の顔…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中