最新記事

東南アジア

ミャンマー民主派抵抗政府が武器供与を訴え ASEANへの承認要望も

2022年8月1日(月)19時57分
大塚智彦
デモを行うミャンマー市民

NUGを支持するデモを行うミャンマー市民。REUTERS

<ウクライナへの欧米の軍事供与を念頭に要望>

ミャンマーのミン・アウン・フライン国軍司令官をトップとする軍事政権に対抗するために組織された民主派の抵抗政府である「国民統一政府(NUG)」は7月28日に国際社会に対して軍装備品や武器弾薬の供与を求めた。

NUGは軍政が逮捕・訴追している民主政府指導者だったアウン・サン・スー・チー氏の側近だった民主派元国会議員と著名な民主活動家など4人の死刑確定囚への7月23日の死刑執行に対抗して、軍政との戦闘を強化するために武器供与は必要だとしている。

NUGのドゥア・ラシ・ラ大統領代行は「ファシスト軍政と戦うために命を犠牲にしているミャンマー人への技術支援、武器弾薬、資金援助を切実に要請する」と国際社会の協力を呼びかけた。

NUGはスー・チー氏の政権を支えた民主派政治家や少数民族代表により組織された抵抗政府。大統領代行はじめ主な閣僚やメンバーはミャンマー国内の少数民族武装組織の支配地域などに潜伏。あるいは国外に脱出して抵抗活動を続けている。

軍政はNUGをテロ組織としてメンバーの摘発に躍起となっているが、NUGはSNSや地下放送などで国内外から軍政批判と情報発信を継続している。

民主派政治犯への死刑執行に対してNUGは「4人の殉教者の犠牲は革命に大きな推進力を与えるだろう」と述べ、NUG傘下の武装市民抵抗組織「国民防衛軍(PDF)」に対し各地で軍との戦闘激化を指示している。

こうした武器供与要求の背景にはロシアが軍事侵攻したウクライナへの米国からの最新鋭の高度な誘導弾や精密砲弾などの武器提供があり、「国家同士の戦争と軍政と民主派組織の内戦という違いはあるが、多くの市民が戦闘や人権侵害で亡くなっている状況は同じ」との認識がNUGの根底にあるとされている。

対ASEANにNUGを認定要求

こうした武器供与の要求を国際社会に求めると同時にNUGはミャンマーも加盟する東南アジア諸国連合(ASEAN)に対してミャンマーを代表する政権としてNUGを認定し、ASEANが主宰する外相、財務相、国防相そして首脳会議にNUGの各閣僚、代表を参加できるように求めている。

8月3日に今年のASEAN議長国であるカンボジアで開催されるASEAN外相会議にもNUGは出席を求めている。同外相会議はミャンマー軍政の代表を招待しておらず、軍政代表欠席で主にミャンマー問題を協議する見通しとなっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

仏大統領、中国に関税警告 対EU貿易黒字巡り=仏紙

ワールド

仏大統領、ウクライナ情勢協議へ8日にロンドン訪問 

ワールド

香港議会選の投票率低調、過去最低は上回る 棄権扇動

ワールド

米特使、ウクライナ和平合意「非常に近い」 ロは根本
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中