最新記事

東南アジア

ミャンマーで日本人ジャーナリスト拘束 民主派デモを取材中に

2022年7月31日(日)10時28分
大塚智彦
ミャンマー首都ヤンゴンでのフラッシュモブ形式のデモ

ミャンマー首都ヤンゴンで7月25日に行われたフラッシュモブ形式でのデモの様子。REUTERS

<政治犯への死刑執行などで国際的に批判を受けるミャンマーで何が起きた?>

2021年2月1日の国軍によるクーデター以降、反軍政を唱える民主派市民のデモや集会に厳しい姿勢で臨んでいるミャンマーで7月30日、日本人が拘束された模様だ。

治安当局も沈黙しており、現地日本大使館も正確な情報を持ち合わせていないようだが、現地の関係者は「拘束されたのはほぼ間違いないと聞いている」としている。

関係者によると身柄が拘束されたのはジャーナリストの久保田徹さん。30日午後6時ごろ中心都市ヤンゴンの南ダゴン郡区で市民らによる民主化要求デモを取材中にミャンマー人男女2人とともに警戒中の警察官に身柄を拘束されたという。

拘束時、久保田さんはカメラでデモの様子を撮影中で、それが警察官の目に留まったものとみられている。同じく拘束されたミャンマー人男女は久保田さんの通訳などの可能性があるという。

ロヒンギャ問題を専門に取材

久保田さんは慶応大学在学中からミャンマーの少数民族ロヒンギャ族の難民問題を中心に取材活動を始め、ドキュメンタリー作品を発表している。

以前は中東のテレビ局「アルジャジーラ」や「NHKワールド」などでディレクターやカメラを担当していたとの経歴が久保田さんのホームページには記され、最近は英ロンドン在住という。

ロヒンギャ族はミャンマー西部ラカイン州などに多数住む少数イスラム教徒で、同国内では多数派の仏教徒から迫害や差別を長年受けてきた歴史がある。

2017年にミャンマー治安部隊とロヒンギャ族の抵抗組織との衝突をきっかけに、国軍によるロヒンギャ住民の大規模な弾圧や虐殺が明らかになり、多くの住民が難を逃れるため隣国のバングラデシュに越境避難。その数は90万人以上とされている。バングラデシュ領の国境地帯にあるコックスバサールなどには大規模な難民キャンプが設置され、バングラデシュ政府や国際機関による援助、支援が続いている。

久保田さんはこうしたロヒンギャ難民を主に取材しており、デモに参加していたロヒンギャ族の人たちも撮影していたとのことから現地の関係者は「早期釈放は難しい可能性がある」と悲観的見方を示した。

一方、ヤンゴンにある日本大使館は「当局に早期の解放を求めているが、拘束が長期に及ぶ可能性は低い」として情報収集を急いでいるという。

拘束された久保田徹さん(久保田さんのツイッターより)
今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

JAL、今期の純利益7.4%増の見通し 市場予想上

ワールド

NZの10年超ぶり悪天候、最悪脱する 首都空港なお

ワールド

日米2回目の関税交渉、赤沢氏「突っ込んだ議論」 次

ワールド

原油先物が上昇、米中貿易戦争の緩和期待で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 9
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 10
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中