最新記事

人権問題

ミャンマー軍政、さらなる死刑執行の恐れ 刑務所で死刑囚を他の受刑者から隔離

2022年7月30日(土)21時30分
大塚智彦
ヤンゴンの刑務所

ヤンゴンの刑務所 REUTERS/Ann Wang

<国際社会の批判をよそに、さらなる政治犯への死刑執行が──>

ミャンマーの軍事政権が死刑判決の確定した民主化運活動家ら政治犯への死刑を執行する恐れが生じている。

ミン・アウン・フライン国軍司令官をトップとする軍政に対抗するためにクーデター以降に結成された民主化勢力の「国民統一政府(NUG)」が7月26日に明らかにした。

ミャンマー軍政は7月23日に民主派指導者アウン・サン・スー・チーさんが率いていた与党「国民民主連盟(NLD)」の元国会議員ピョ―・ザヤル・ゾー氏(41歳)と1980年代からの民主化運動の著名な活動家チョー・ミン・ユー(愛称コー・ジミー、63歳)の2氏と軍政の女性スパイをヤンゴン市内の鉄道車内で殺害したフラ・ミョ・アウン氏とアウン・トゥラ・ゾー氏の計4人の政治犯に死刑を執行した。

4人の政治犯に対する死刑執行はNUGなどの民主勢力だけでなくミャンマーも加盟する東南アジア諸国連合(ASEAN)、欧米、国連などからも厳しい非難が寄せられたが、軍政は「法に従って死刑は執行された」と正当性を主張して国際世論を無視し続けている。

この4人の政治犯に対する死刑執行は1976年以来の法に基づく執行で、ミャンマーでは長らく執行されなかった極刑の執行、しかも公正な司法手続きが行われたのか疑わしいということもあり、世界的に批判が寄せられている。

さらなる政治犯の死刑執行の懸念

4人の政治犯への死刑執行を受けて26日にNUGは緊急協議を行いドゥア・ラシ・ラ大統領代行、マン・ウィン・カイン・タン連邦首相らが出席して「民主化の革命を一層加速する」と強硬姿勢を示したことから、軍政は死刑執行による反軍政運動の鎮静化や弱体化という「狙い」が外れたとして、さらなる政治犯の死刑執行の恐れが高まっているのだ。

タイ・バンコクに拠点を置くミャンマーの人権団体「政治犯支援協会(AAPP)」によると28日現在ヤンゴンのインセイン刑務所には76人の死刑判決が確定した政治犯がいるという。

「国民統一政府(NUG)」によるとインセイン刑務所内でこうした死刑確定囚の政治犯がその他の受刑者から最近隔離されたという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「ロシアとウクライナに素晴らしい日に」、

ビジネス

関税は生産性を低下させインフレを助長=クックFRB

ビジネス

トランプ政策になお不確実性、影響見極めに時間必要=

ビジネス

米財務長官、債務上限で7月中旬までの対応要請 8月
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノーパンツルックで美脚解放も「普段着」「手抜き」と酷評
  • 3
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦闘機を撃墜する「世界初」の映像をウクライナが公開
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    指に痛みが...皮膚を破って「異物」が出てきた様子を…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 8
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    「股間に顔」BLACKPINKリサ、ノーパンツルックで妖艶…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 3
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 4
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 5
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 6
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 9
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 10
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中