最新記事

飢餓

東アフリカで干ばつが進行 サルが女性と子供を襲い、人々は牛小屋の水で命つなぐ

2022年7月13日(水)16時56分
青葉やまと

ここ数十年で最悪の世界的飢餓の危機...... Al Jazeera English-YouTube

<かつて人間をみれば逃げていた野生動物が、水を奪うため人間に襲いかかるようになった>

エチオピアなど東アフリカで、干ばつによる被害が深刻化している。気候変動による国内作物の不作と、ウクライナ情勢による国際的な食糧危機が重なり、過去数十年で最悪の飢餓に発展した。

年に2回訪れるはずの雨季は、もう4期連続でまとまった雨をもたらしていない。植物の生育不良を受け、野生動物が凶暴化の兆しをみせている。このところ報告が増えているのは、サルの襲撃事例だ。

英NGOのセーブ・ザ・チルドレンの幹部は、米ABCニュースに対し、「多くの家族が、空腹のサルたちを棒で追いはらう必要に駆られている。このような報告を複数受けています」と語った。この地域のサルは通常ヒトを襲うことはないが、干ばつ被害の深刻な地域を中心に行動が変容しているという。

同団体はまた、エチオピア、ケニア、ソマリアを合わせ、2300万人以上が「極度の飢餓状態」にあると発表している。

「数十年で最悪の飢餓」家畜小屋の水を飲んで凌ぐ日々

団体は現状を、「ここ数十年で最悪の世界的飢餓の危機」であると指摘している。当該地域の人々は「生きるため、家畜小屋の飼い葉桶に溜まった水を飲み、腐敗した肉を食べ、食糧をめぐり野生動物と戦うなど、極端な手段に訴えている」という。

かねてから数年単位の干ばつが続いていたところ、新型コロナの影響で経済情勢が悪化した。さらにウクライナ紛争を受け、小麦とひまわり油など生活必需品の価格が高騰しており、現地で食糧を入手することは至難の業となっている。

被害はアフリカ東部に突き出た、「アフリカの角(つの)」と呼ばれる半島部分で深刻だ。この地域には、エチオピア、ソマリア、ケニア北部などが含まれる。

巨体のイボイノシシが家屋に突入

ケニア北部では、食糧だけでなく水を奪う目的でもサルが人を襲うようになった。水場から運んで帰る途中、女性や子供がねらわれる例が相次いで発生している。このほか、体重が最大で150キロほどにも達するイボイノシシが家屋に突入し、食べ物を漁る事例もたびたび報告されるようになった。

英デイリー・メール紙は、「以前であれば人の匂いがした途端に逃げていた野生動物たちが、いまではまるで去ろうとしない」と指摘している。

同地域で活動する栄養士は、惨状を次のように語る。「病気が至る所に蔓延しており、これらは飢えと渇きに起因しています。耳にした情報によると、いくつかの集落では状況が非常に悪く、家畜が飢えて死んだあと、腐ったその肉を食べなければならなかったようです。ほかに食べ物を手に入れる手段がなかったのです。」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中