ウクライナ戦争に「酷似した戦争」が20世紀にあった...その「結末」から分かること
The Korean War Redux
第1に、ウクライナ戦争を契機にロシアの対中依存度が高まった。中ロはここ10年ほど、経済関係を拡大し、合同軍事演習を行い、先端技術の開発で手を組むなど、着実に協力関係を深めてきた。ロシアの最大の貿易相手国は中国だ。ロシア産原油の輸入量では中国がトップを占め、中ロを結ぶ天然ガスパイプラインの増設も進んでいる。
西側は中ロの接近に警戒感を募らせてきたが、ウクライナ侵攻でロシアに制裁を科すことになり、西側との取引を断たれたロシアはますます中国頼みに傾くようになった。
ついに中国の「脅威」に気付いた欧州
第2にロシアが軍事侵攻に踏み切ったため、中国もやりかねないと欧州勢が警戒感を強めた。欧州勢は伝統的に中国をさほど重大な安全保障上の脅威と見なしてこなかった。雲行きが変わり始めたのは最近のことだ。
EUは2019年に中国を「体制上のライバル」と位置付けた。この頃から欧州勢も中国との経済関係にはリスクが付きまとうと気付き始めた。そのため中国の通信機器大手を第5世代(5G)インフラから締め出すなど、対中関係を制限するようになった。
イエンス・ストルテンベルグNATO事務総長は昨年、中国が直接的な脅威になりつつあると主張。中国がロシアのウクライナ侵攻を正面切って非難しないことも、欧州勢の対中不信を増大させた。
なかでもウクライナ侵攻開始のわずか20日前に中ロ首脳が共同声明で「無制限」の協力関係を宣言したことは西側の警戒感をかき立てた。ベラルーシのウクライナとの国境地帯に何万ものロシア兵が集結する最中に発表されたこの声明で、中ロはNATOに東方拡大をやめるよう呼び掛けた。EUのジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表は、この声明を「挑戦的」と批判。6月末にNATO首脳会議で採択された今後10年の行動指針となる新たな「戦略概念」も中国に初めて言及し、西側に「体制上の挑戦」を突き付けていると警戒感を示した。
第3に、ウクライナ戦争は米中の経済的分断を深めており、相互依存を限定的なものにしようとする動きを加速させる。二極対立の世界において、2つの超大国は経済的な相互依存が互いの弱点になると考えるだろう。
米中はこの3、4年で、密接な経済関係のデカップリング(切り離し)の第1段階を緩やかに進めてきた。中国はロシアに対する欧米の迅速かつ強力な経済制裁を見て、自分たちが欧米の技術や市場に依存することについて懸念を強めている。アメリカも、ヨーロッパがエネルギー安全保障をロシアに依存している現状を、対中関係でまねしようとは思わない。