ウクライナ戦争に「酷似した戦争」が20世紀にあった...その「結末」から分かること
The Korean War Redux
第4に、ウクライナ戦争はNATOおよび環大西洋コミュニティーの一体感を新たにした。ここ数年は欧米の溝の深まりが懸念されていたが、風向きは逆転した。アメリカはヨーロッパで軍事的プレゼンスを高め、ヨーロッパのNATO加盟国は国防費を増強している。歴代の米大統領が求めてきた同盟内の負担のバランスに、ヨーロッパがようやく応えつつある。
米中対立の新時代は多くの点で冷戦時代に似ているが、独自の特徴もある。米ソの対立は冷戦時代の初期、危険なほど不安定だった。
朝鮮戦争はアメリカの戦略に3つの影響を与えた。まず、かつては周辺と見なされていた地域が戦略上重要な関心事となり、ユーラシア大陸全域でソ連圏を封じ込める防衛線戦略が導入された。
そして、アメリカはさらなる代理戦争に備え、同盟国と緊密に連携しながら通常戦力と核戦力を増強し、ソ連との軍拡競争に邁進した。最終的に冷戦の主戦場はヨーロッパの陸上に移り、大量報復戦略(核戦力を中心とする圧倒的な戦力で即時かつ大量の報復をする戦略)が生まれ、ヨーロッパ大陸を分断している固定線を越えようとする試みに対して強い抑止力になった。
二極化はさほど進まないが安定もしない
これらの戦略の結果、朝鮮戦争後の冷戦時代は二極化が進んだものの、比較的静的で安定していた。
現在顕在化している米中対立は、高度な相互関係を考えれば、そこまで二極化しないだろうが、そこまで安定するわけでもないだろう。
1970年代にリチャード・ニクソン米大統領(当時)は、中国との関係改善でソ連を牽制するという「チャイナ・カード」を切った。以来、中国はアメリカ主導の自由主義的な国際秩序の中で台頭してきた。現在、中国は欧米と経済的な相互依存関係にあり、二極化がそこまで進むことはなさそうだ。
冷戦時代は、大陸勢力であるソ連と海洋勢力であるアメリカの対立という図式が明確だったことが、二極化を進めた。一方、現在の中国は大陸と海洋の両方の力を持ち、貿易と接続性に有利な立場だ。
さらに、中国の地理的特性が、世界の地政学的な分断を弱める。ユーラシア大陸の中心に位置するソ連は、ヨーロッパから極東まで、ユーラシアのリムランド(大陸勢力と海洋勢力が接触する地帯)全体にとって脅威になった。