最新記事

世界経済危機

戦争、インフレ、食糧不足......戦後最大の世界経済危機が迫っている

DIVIDED AND POWERLESS

2022年6月30日(木)19時45分
エドワード・オルデン(米外交問題評議会上級研究員)

ジョー・バイデン米大統領は小異を捨てて大同に就く方針で、各国と広範な協力体制を築こうと努力している。EUとは、輸出規制やデータ共有、戦略的に重要な技術の保護強化などの問題で協調できるよう、難しい調整を続けている。

5月に訪日したバイデン大統領は日本や韓国、インドを含む新しいインド太平洋経済枠組み(IPEF)を立ち上げた。まだ詳細は明らかでないが、この枠組みはデジタル貿易や脱炭素化、税制調整などで協力促進を目指している。

6月上旬にはロサンゼルスで米州機構(OAS)首脳会議(米州サミット)を開き、同様な議題を盛り込んだ「経済繁栄のための米州パートナーシップ構想」を発表した。

ただしこの会議には、ブラジルに次ぐ中南米第2の経済大国メキシコが出席していなかった。同国のアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は、バイデン政権がキューバ、ベネズエラ、ニカラグアを排除したため会議をボイコットした。

だが、こうした創意工夫を凝らした取り組みも、現下の危機に対応するには不十分だ。これまでの危機では、世界の主要国政府はそれぞれの相違点を乗り越えた上で、しっかりとした対応策を打ち出すことができた。

だが今回は、そうした動きが全く見られない。こうした協力関係の崩壊は、今回の一連の危機がもたらした最も永続的かつ憂慮すべき影響かもしれない。

これまでのところ、一連の混乱が世界貿易全体に大きな打撃を与えた様子はない。食糧やエネルギーなどの分野は混乱しているが、昨年の貿易額は記録的な水準に達していた(ただし今年は減少している)。

だが今回の危機で、世界の主要経済国が抱いていた確信は崩れた。それまでは、互いにどんな相違があろうと、経済成長と安定を最重要視する点で一致し、目標達成のために可能な限り協力できると信じていられた。

しかし今回は、舵取り役がどこにもいない。

From Foreign Policy Magazine

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ政権、予算教書を公表 国防以外で1630億

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、堅調な雇用統計受け下げ幅縮

ワールド

トランプ氏誕生日に軍事パレード、6月14日 陸軍2

ワールド

トランプ氏、ハーバード大の免税資格剥奪を再表明 民
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単に作れる...カギを握る「2時間」の使い方
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 6
    宇宙からしか見えない日食、NASAの観測衛星が撮影に…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    金を爆買いする中国のアメリカ離れ
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 10
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中