最新記事

沖縄の論点

私のハンストで浮かび出た日本政治の冷酷

NO BASE FOR HENOKO

2022年6月23日(木)11時25分
元山仁士郎(一橋大学大学院生)
元山仁士郎

元山は防衛省前でもハンストを行った(5月12日) HAJIME KIMURA FOR NEWSWEEK JAPAN

<沖縄の基地問題は「仕方のない」ことではない。岸田首相に期待をかけ、151時間に及ぶ抗議行動を行った>

沖縄の統治国がアメリカから日本になって50年。沖縄の現状を体を張って訴えるべく、私は5月9日から東京でハンガーストライキによる抗議を始めた。

水と塩のみを摂取し、岸田文雄首相が以下の要求をのむか、私にドクターストップがかかるまで続けるという条件だった。

220628cover.jpgその主な要求は①辺野古新基地建設の即時断念、②普天間飛行場の数年以内の運用停止、③日米地位協定の運用に関わる全ての日米合意を公開し、沖縄県を含む民主的な議論を経て見直すことだ。

最終的に5月15日にドクターストップが出て、151時間に及ぶ抗議行動を終了した。沖縄復帰50周年記念式典が行われた沖縄コンベンションセンターに場所を移した後、どんよりと曇る空の下での決断だった。

今回のハンストで感じたのは、残念ながら岸田政権には、沖縄の多くの人が望むように基地問題を解決しようとする意思が見られないことだ。

まず前提として、沖縄の基地問題は「仕方のない」ことではない。軍事的な問題ではなく政治的な問題であることは、安倍晋三元首相や歴代の防衛相、官房長官のほか、ジョセフ・ナイらアメリカ政府関係者も認めている。

例えば1995年に沖縄米軍基地の整理・縮小などを協議するSACO(日米特別行動委員会)設置に米国防次官補として携わったナイは、2014、15年の寄稿やインタビューで「中国が高度な弾道ミサイルを開発するなか、沖縄の基地はどんどん脆弱になる」「沖縄の人々の支持が得られないなら、米政府は辺野古移設を再検討しなければならないだろう」と述べている。

また2018年2月の衆議院予算委員会で安倍首相(当時)は、沖縄の基地負担軽減が困難な理由に「移設先となる本土の理解を得られない」ことを挙げた。つまり「本土の理解」が得られれば、沖縄の基地負担はより軽減される。

さらに言えば、沖縄の理解は得ずに基地建設を強行しても、政権の安定には支障がないということだろう。このように、沖縄の基地問題は政治的に維持され続けている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EU・仏・独が米を非難、元欧州委員らへのビザ発給禁

ビジネス

中国人民銀、為替の安定と緩和的金融政策の維持を強調

ビジネス

米新規失業保険申請件数、1万件減の21.4万件 継

ワールド

ウクライナ和平の米提案をプーチン氏に説明、近く立場
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 5
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 6
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 7
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 8
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 9
    【投資信託】オルカンだけでいいの? 2025年の人気ラ…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中