最新記事

生態系

1つのティーバッグから昆虫400種の痕跡が発見される

Researchers Find Traces of Over 400 Types of Insects in Single Tea Bag

2022年6月23日(木)19時27分
ジョセフ・ゴルダー(ゼンガー・ニュース)

虫たちのDNAはこれまで、捕獲して殺さなければ調べられなかった Dmitry Dmitry-iStock.

<ドイツの研究チームが、乾燥した茶葉からかつてそこにいた虫のDNAを採取・解析する画期的な技術を開発>

たった1袋のティーバッグから400種もの昆虫の痕跡が見つかった──ドイツの研究チームが独自開発したDNAの検出技術でチャノキと共生・寄生関係にあった昆虫を調べた結果だ。

この論文を発表したのは、ドイツ西部ラインラント・ブファルツ州にあるトリーア大学のヘンリック・クレヘンビンケル教授(専門は生物地理学)率いるチーム。「市販の紅茶とハーブティーを調べ、1つのティーバッグから最大400種の異なる昆虫のDNAを採取した」という。

チームはティーバッグに入った茶葉から昆虫の痕跡を検出できる新技術を開発した。

これは「乾燥処理した植物から、有用なデータとなる環境DNA(eDNA)を採取し解析できる」画期的な技術だと、トリーア大学は声明で述べている。

環境DNAとは、海や川や湖沼などの水、土壌、大気中に含まれるDNAのこと。つまり、そこに生息していた生物の痕跡だ。

植物の奥深くに潜む虫を特定

ティーバッグに含まれていたのは「地球規模の生態系のバランスにとって、測り知れないほど重要な役割を果たしている」虫たちのDNAであり、それを採取する新技術は非常に有用なツールになると、声明は指摘している。

「近年、水中、土壌、さらには植物の表面など、ほぼあらゆる環境からeDNAを採取できるようになり、生物調査を通じて環境の状態や変化を調べる生物モニタリング研究は飛躍的な進歩を遂げた」と、声明は述べている。「ただし、昆虫の調査は、これまでトラップ(罠)で捕獲する方式が一般的だった」

餌や粘着シートなどを使うトラップ調査は、昆虫を捕獲して殺すことになる上、植物の表面にとりつく虫しか調べられない点がネックだったが、新技術では「植物の内部に潜んでいた虫の痕跡を検出できる」と、クレヘンビンケルは言う。

「植物の表面からは昆虫のDNAは採取しにくい。紫外線で壊れたり、雨に流されたりするからだ。また、採取できたとしても、表面に残された痕跡だけでは、奥深くにどんな虫が潜んでいたかは分からない。植物をつぶしたり、乾燥させたりしてeDNAを採取する必要がある」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベネズエラ、外貨減少とインフレ上昇に直面へ 米の「

ビジネス

マイクロン四半期利益見通しが予想超え、AI需要追い

ビジネス

お知らせ-重複記事を削除します

ビジネス

NZ経済、第3四半期は前期比+1.1% プラス成長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中