最新記事

ロボット

わずか0.5ミリの世界最小の遠隔操作型歩行ロボットが開発される

2022年6月6日(月)16時30分
松岡由希子

コインの厚みは、ロボットが乗るのに十分...... Pic: John Rogers / Northwestern University

<幅わずか0.5ミリの世界最小の遠隔操作型歩行ロボットが開発された。歩いたり、曲がったり、ねじったり、跳んだりできる......>

米ノースウェスタン大学の研究チームは、幅わずか0.5ミリの世界最小の遠隔操作型歩行ロボットを開発した。小さいカニのような形状で脚8本と腕2本を持ち、複雑なハードウェアや油圧、電気を用いることなく、歩いたり、曲がったり、ねじったり、跳んだりできる。

レーザービームが遠隔操作の役割を担う

一連の研究成果は、2022年5月25日、学術雑誌「サイエンス・ロボティクス」で発表されている。

このロボットの材料には、加熱すると記憶した形状に変形する形状記憶合金(SMA)が用いられ、レーザービームが遠隔操作の役割を担う。具体的には、ロボットの特定の箇所にレーザービームを照射して急速に加熱すると、その箇所が変形し、冷却されるとガラスの薄膜によって変形した箇所が元に戻る。

つまり、記憶した形状に変形し、これが元に戻ることで、動作を生み出す仕組みだ。ロボットがとても小さいため冷却速度が非常に速く、1秒あたり体長の半分の距離を移動できる。レーザーの照射方向によってロボットの移動方向が決まり、左から右へレーザーを照射すると、ロボットは右から左へ移動する。

小さな構造物の修理や、低侵襲治療での手術に

このロボットは、研究チームが2015年に開発した組立法をベースとしている。飛び出す絵本(ポップアップブック)から着想したこの組立法では、まず、平面上でロボットの前駆体を作製し、わずかに伸ばしたゴム基板にこれを接合する。

この伸びた基板を緩めると、定義された三次元の形状でロボットが飛び出す仕組みだ。この組立法を用いれば、様々な形状や大きさのロボットを開発できるという。

研究論文の筆頭著者でノースウェスタン大学のジョン・ロジャース教授は、マイクロロボットの可能性について「小さな構造物や機械の修理や組立を担うほか、動脈血栓の除去やがん性腫瘍の切除など、低侵襲治療での手術に役立つであろう」とし、工業や医療など、幅広い分野での活用に期待を寄せている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ホワイトハウス、女性記者を「子ブタ」と呼んだトラン

ワールド

タイ経済は非常に安定、第4四半期の回復見込む=財務

ワールド

EUと南アが重要鉱物に関する協力協定、多国間主義維

ビジネス

BNPパリバ、中核的自己資本比率目標引き上げ 27
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 8
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 9
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中