最新記事

米中関係

バイデンは中露分断のチャンスをふいにした

Is Biden Missing a Chance to Engage China?

2022年5月24日(火)19時33分
マイケル・ハーシュ(フォーリン・ポリシー誌上級特派員)

5月24日には、バイデンはクアッド(日米豪印戦略対話)の首脳会合に出席。インド太平洋地域で影響力の拡大を狙う中国を孤立させ、また中国に対抗するための協議だ。

バイデンの今回の東アジア歴訪は、アメリカがヨーロッパだけでなくアジアにも多くの同盟国を持っていることを示し、プーチンがウクライナで試みていることを、中国が台湾に対して行うのを抑止することが狙いだ。バイデンは23日に東京で行った会見の中で、記者団からの質問に対して、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて台湾を守る決意が「ますます強くなった」と発言。

中国が台湾に軍事攻撃を行った場合には、台湾を守るために軍事介入するつもりだと述べた。アメリカの台湾防衛に関する方針は意図的に「あいまい」にされているが、そこからすると大きく踏み込んだ発言だ。

中国外務省の汪文斌副報道局長は、このバイデン発言について、中国政府として「断固反対」の立場を表明。「台湾の問題は中国の内政問題であり、いかなる外部勢力の干渉も許さない」と強調した。

対中強硬一辺倒に疑問

中国に対するこうした強硬なメッセージは、バイデンの大統領就任時から変わらない基本的なやり方だ。しかし一部のストラテジストは、中国に対して新たなアプローチを取る機会が訪れつつあるのではないかと考えている。形勢を傍観するしかない中国がそのメンツを保ったまま、ウクライナでのロシアの最悪な混乱ぶりからさらに距離を置くチャンスを与えることができるのではないかというのだ。

中国が近い将来、劇的な方針転換を行う可能性は低いし、それが実現可能だとも思えない。バイデンと習近平がいずれも、国内で米中対立を政治的に利用していることを考えればなおさらだ。バイデンは11月に中間選挙を控えており、連邦議会と良好な関係を維持するためには、対中タカ派の数多くの議員の支持を得る必要がある。一方の習も、秋の第20回共産党大会で3期目続投を確実なものにするためには、アメリカに対して弱腰の姿勢は見せられない。

アメリカの対中政策に詳しい元米外交官(匿名)は、「米中双方にとって今こそ、方針転換を行うべきかどうかを詳しく探るべき時」だと指摘した。「それによって両者が国内で払う犠牲は大きいが、潜在的な利益もとてつもなく大きい」

ヘンリー・キッシンジャー米国務長官が米中国交正常化の道を開いた約50年前に国務次官補を務めたウィンストン・ロードは、習近平が「専制君主仲間(のプーチン)に今も親近感を抱いている」ことは間違いないと指摘。だが一方で、ロシアがウクライナ侵攻を開始する数週間前に、プーチンと習が首脳会談を行って「限りのない」戦略的パートナーシップを宣言した時から、状況は劇的に変化しているとも述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PCE価格、6月前年比+2.6%に加速 前月比+

ビジネス

再送-トランプ大統領、金利据え置いたパウエルFRB

ワールド

キーウ空爆で8人死亡、88人負傷 子どもの負傷一晩

ビジネス

再送関税妥結評価も見極め継続、日銀総裁「政策後手に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 3
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 10
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中