最新記事

中国軍事

中国のミサイル実験の標的に自衛隊機の模型、台湾侵攻を想定

Satellite Images Hint at China's Taiwan Invasion Plans

2022年5月25日(水)18時09分
ジョン・フェン

衛星写真でタクラマカン砂漠のミサイル発射実験場に発見した航空自衛隊のMF-767機らしき実物大模型 PLANET LABS PBC

<タクラマカン砂漠のミサイル実験場に、台湾有事があれば出動するとみられる自衛隊機の実物大模型が設置されていることが衛星写真で発見された>

中国北西部の砂漠地帯で撮影された新しい衛星画像から、自衛隊機とそっくりの形をしたミサイル標的用の物体が発見された。この自衛隊機は、中国が台湾を攻撃した場合に使用される可能性がある。

日本は、アメリカ以外の国で最も多くの米軍部隊を受け入れている国で、太平洋における米軍の戦力投射の要所でもある。またアメリカの同盟国として、将来的に台湾の防衛に関与する可能性が最も高い。

日本経済新聞の英字紙「NIKKEI Asia」が5月20日に報じたところによると、中国軍が新疆ウイグル自治区のタクラマカン砂漠で射撃訓練に使用している物体は、日本の航空自衛隊(JASDF)が運用する早期警戒管制機(AWACS)で、ボーイングE-767をモデルにした実物大模型だと研究者らは考えている。

photo01.jpeg
自衛隊のE-767AWACS  航空自衛隊

5月13日に新疆ウイグル自治区で撮影されたその衛星写真には、滑走路の上に配置された双発エンジンと機体に大きな円盤状のレーダーを搭載した航空機の実物大模型が写っている。その周囲には小型の戦闘機が何機も置かれている。

新米国安全保障センター非常勤シニアフェローで防衛アナリストのトーマス・シュガートは、この航空機模型をボーイングE-767と特定し、航空自衛隊が浜松基地で4機運用している、と同紙は報じた。

AWACSは戦闘において重要な監視の役割を果たし、空域を監視して地上のレーダー局では発見できない敵機やミサイルを探知、追跡する。E-767の場合、航続距離は約9000キロに達する。

軍艦や桟橋、港の模型も

NIKKEI Asiaによると、全米科学者連盟核情報プロジェクトのマット・コルダ研究員は、アメリカの衛星会社プラネット・ラボが撮影した画像から、場所を特定した。プラネット社は、この記事のために本誌に画像を提供した。

コルダは2021年夏、新疆と甘粛の別々の場所に建設されている数百のミサイル格納庫を発見した2つの分析チームの一員だった。このときもプラネット社の写真が役に立った。

5月初めには、米海軍研究所(USNI)がタクラマカン砂漠で軍艦と桟橋に似た発射実験用標的を発見している。台北のアナリストは、この桟橋の形状が台湾東部にある蘇澳港の特徴に似ていると指摘した。

USNI ニュースは2021年にこの砂漠で、レールの上に置かれた米空母と駆逐艦の模型を発見したと報じたが、いずれもミサイル実験の仮想標的だった可能性が高い。

アメリカ、日本、台湾の各政府にとって、中国のこうした訓練の狙いは明らかだ。人民解放軍が台湾に侵攻して、米軍と自衛隊が軍事介入した場合のシミュレーションをしているのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 10
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中